居心地が悪そうなエツに「オマエも適当に見るように♪」

そう言って、ポン太はAVの物色をはじめた。


今、2人は先ほどの看板を掲げていたレンタルビデオ店、

地下一階にある「男の楽園」にいる。


ポン太は自分の好物である「お姉さんが教えてあげる♪」系の

ビデオ2本を手際よく選んだ後、ちょうど学校の教室ほどの

広さがあるフロアを見回し、エツが立っている陳列棚の方へと

歩いていった。


先ほどとは打って変わった「野獣」の眼差しで、楽園に眠る

宝石たちの鑑定をおこなっているエツに、

「エツ、いいのがあったらオレが借りるから言って♪」

とだけ告げ、ポン太はまた、フロアをぶらぶらと歩き出した。
自分が横にいては選び難かろう、と言う

ポン太なりの配慮であった。


そうしてポン太がすべての陳列棚に一瞥をくれ終えた頃、

エツが1本のビデオを持って照れ臭そうに近づいてきた。

「男は皆、さもありなん。気にするな♪」

との意味を込めた笑みを湛(たた)えてエツを迎えたポン太が、

エツから手渡されたモノに意味なく視線を落とし、了解の合図を

送ろうと、再度、エツに目線を合わせようとしたその瞬間。


突如、脳裏に発生した再燃現象(フラッシュバック)を確認する

ため、エツから手渡されたパッケージを驚愕の表情とともに

2度見する。


・・・見間違いではなかった・・・。


そこには荒縄で裸体を縛られ、恍惚の表情を浮かべている

女性がでかでかと映し出されていた・・・。


「エツ・・・さん?」

さすがにこのジャンルが世の中に認知されている事は承知して

いたが、この嗜好を持つ人が現実に存在するのを、まだリアルに

イメージできていなかった18歳のポン太に与えた衝撃は

凄まじかった。


しかし、そこは、

「何事においてもリベラルたれ」を信念とするポン太。

すぐにエツの嗜好を受け入れ、それを過日の出来事と

消化していたのだが、友人の異変に気付いて困惑と

テレがないまぜになったエツの顔を見ていると、

己のイタズラ心を止める事ができない。
ポン太は努めて苦渋の表情を作り出し、自分の性癖を知った

友人の反応に怯えるエツをさらに追い詰めた。

「エツ・・・申し訳ないけど、これはオレの羞恥心の限界

を越えとる・・・ここにはまた来たいし・・・よう借りんわ・・・。

それと・・・明日から学校で声掛けんといてな・・・」


額から冷や汗を流さんばかりに凍りついたエツ。その表情を

十分に堪能したポン太は、今度は満面の笑みをエツに向け、

拍子抜けするぐらいの明るい声で、


「エツ、もう1つ先に謝っておくけど、

このことは明日、学校で言うから♪」

と言い、状況が飲み込めずにきょとんとしているエツから視線を

外すと、そのまま軽やかな足どりで階段を上がっていった。


このあと、ポン太の家に着くまで続けられたエツの必死の

説得工作が実を結ぶ事はなかった。


翌日、くだんの出来事を言い触らされたエツのアダ名が、

「エツ」から「エス(S)」に変わったのは何処の世界でも

よくある話かもしれない・・・。


さらに余談であるが、この2カ月後に行われた体育祭、

騎馬戦でのエスの予想外の大活躍をスタンドから見ていた

ポン太によって、エスのあだ名が「ドS」ならぬ、「ドエツ」に

再度、変更されることを、この時の2人は

まだ知る由もない・・・。


おしまい☆


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