「何とか、朝の10分と夜の2時間を交換する

方法はないんかい!ドラミちゃん、何とかしてくれ!!」

早朝の国道。起きぬけのぼさぼさ頭のポン太は

心の中でドラえもんではなくドラミちゃんをチョイスした

自分に満足しつつも、鬼の形相でひたすらシリをシェイク

させながら必死の立ち漕ぎで学校に向かっていた。


市内の西に住むポン太はさらに西の端にある高校まで、

自転車で通っているのだが、行きは完全な上りのため、

毎朝30分の間、狂ったようにペダルを

蹴り続けなければならない。

余裕を持って早めに起きるという発想はもちろん、

ポン太にはない。


特に夏場は地獄で、今朝も汗まみれになって教室に

ついた時には、もともと希薄なポン太の向学心が

疲労のお陰で跡形もなくなってしまっていた。

(汗のお陰で寝ぐせの跡形もなくなる☆)


そして終日、放心状態のまま滞りなく授業をやり過ごした

ポンタは、友人達と下校のため小高い丘の上に建つ校舎を

出てすぐ右手にある階段に向かった。


ポン太が最初の一段目を踏み外さないよう足元に視線を

落とした瞬間、その先に階段を下り終えようとする見知った

後ろ姿が視界に入ってきた。


「おーい!アホのクラスのエツ~ゥ♪」

この予期せぬ呼びかけに不意を突かれ、水中で溺れる

かなづちが酸素を求めて懸命に両手で水を掻くような

リアクションをしている小柄な生徒こそ、入学した時、

ポン太の座席のすぐ後ろに座っていたエツであり、

エツは2年次の成績不振が祟って3年に上がるとき、

下のクラスに落とされていたのである。


一緒にいたクラスメイトを置き去りにして、ポン太は急ぎ足で

階段を駆け下り、待っていた旧友の首に長い腕を巻きつけ

ながら旧友の顔を笑顔で覗き込んだ。

「エツ、久しぶり♪」

「ポッ、ポンちゃん」

「クラスが違うとなかなか会わんな♪」

エツの方も久しぶりのポン太にハニカミながらも

やり返してくる。

「ポンちゃんがオレを避けてるからやろ♪」

「当たり前や。オマエと話すとオレの偏差値下がるやろ♪」

「ブホッ、それはキツイっす♪」

久しぶりに聞く、エツの口を閉じたまま笑う「ブホッ」

という独特の炸裂音が1年生の頃を甦らせる。

「エツ、一緒に帰ろう♪」

「ポンちゃん、連れは?」

「あぁ、アイツら一緒やったら、エツも気ぃ使うやろから

エツと帰る、言うてくるし、ちょっと待ってて」


こうしてポン太とエツは久しぶりに一緒に

帰ることになった。


つづく


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