輝かしい全国ベスト4
国学院久我山を破り、準々決勝へと駒を進めた大阪朝鮮ラグビー部の次なる相手は千葉県代表の流通経済大学附属柏高校であった。流経大柏も関東屈指の伝統校であり強豪校である。この年も大型FW陣を揃え、優勝候補の一角として堂々と構えていた。朝高もまた強豪校を次々に破り、勢いはナンバーワンまで上り詰めていた。ここを勝てば全国制覇も見えてくるベスト4進出、負ければ即終了の緊迫したトーナメント戦。初のベスト8進出に期待と喜びいっぱいの同胞が沢山押し寄せた花園グラウンドにて、運命の準々決勝が始まった。息詰まる攻防戦は予想通り。ボールを目掛けた密集戦では体と体のぶつかり合いがより一層激しい。最初のトライは流経大柏。度重なるFW戦から一瞬の隙をついてトライ。ゴールは失敗に終わるが5-0と先制に成功する。対する朝高もフォワードに重点を置きながらもバックスに展開させ、ボールを常に動き回せトライを虎視眈々と狙う。前半終盤、得意のモール攻撃を押し進め流経大柏ゴール前から抜け出してトライに成功した朝高はゴールも決め、7-5と逆転、そして前半終了。実力が拮抗しているだけに見応えがあるゲーム、だから勝負の行方は誰も予想が出来なかった。後半も手に汗握る好ゲームが展開されるが、両チーム互いにチャンスを幾度と迎えるが得点には至らずの状況が続く。両チーム自慢のフォワード陣は未だに不発、だがモールをうまく組んだチームがトライを決めるだろう、そんな匂いがしてきた。しかし試合を決定付ける勝ち越しトライを奪ったのは朝高のバックス陣だった。センターラインからマイボールスクラムで朝高が選択したプレーはバックス勝負。スクラムハーフからスタンドオフ、そしてフルバックを経て最後は1番左外のウィングへと渡る。皆の想いが詰まったボールを受け取ったウィングは相手ディフェンスを次々抜き去り、最後は倒れ込みながらトライライン大外にフィニッシュ。試合終盤にフォワード、バックス一体となった朝高が奇跡のトライを奪う。ゴールは外れるものの12-5とリードを広げる。まだまだ諦めぬ流経大柏だったが、時間内にスコアボードに得点を刻むことは出来なかった。時間いっぱいまでボールをキープし続けた朝高、最後は外に蹴り出しノーサイド。準々決勝でも強豪を破り、また新しい伝説を作った朝高は歴史上初の全国ベスト4へと進むことになった。朝高史上最弱と言われた高3メンバー、しかし「努力はうそつかない」と信じ続け、練習に全てを捧げてきた彼らが先輩たちも果たせなかった全国ベスト4を実現することになった。関東の雄・桐蔭学園との準決勝はさすがに力尽き、7-33と決勝戦を前に姿を消すことになったが、彼らが残した業績は代々後輩達の活躍に繋がることになった。と同時に高校ラグビーを通して朝鮮学校の存在を日本中に広めたのもこの大会であった。彼らがやってのけたことはただの全国ベスト4入りだけではなかったのだ。新しい伝説を作った高3メンバーが去ったグラウンド。その悔しさを晴らすためにグラウンドに立つのは高2を中心とした新チームであった。そう、中学時代の近畿大会を圧勝で優勝した朝高史上最強の呼び声が高いあのメンバーだ。全国ベスト4を経験したメンバーが9人も残った大阪朝鮮ラグビー部は悲願の優勝を目指して、花園敗退翌日から元気に練習に励む始めたのだ。