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東京五輪時に外国人が現金無しで滞在出来るように、と政府が考えているそうです。原理的には、全ての店に「電子マネーが使えるように」と法律で義務付ければ良いわけですから、難しい話ではありません。その結果、何が起きるのか、考えてみました。

■脱税は困難に、マイナス金利は容易になる
外国人のみならず、日本人も現金が不要になります。そうなれば、日銀と造幣局が現金を発行しなくなるかも知れません。これは素晴らしい世界です。小銭入れを持ち運ぶ必要がない、といった小さなことではありません。

電子マネーとクレジットカードにマイナンバーを登録させる事で、脱税が困難になります。誰がどこで何を買ったのか等、金の移動がすべて税務署に把握されるようになります。政府にプライバシーが丸見えになるので気持ち悪い、と感じる人もいるでしょうが、それで脱税が撲滅されて財政赤字が減るなら、仕方ありません。何より、脱税をしていない正直者としては、正義感や公平感から脱税撲滅を祝いたいです(笑)。

マイナス金利も容易になります。今は、「銀行預金をマイナス金利にすると人々が現金を引き出すので金庫が売れる一方で強盗が増える」と予想されるわけですが、現金の無い世界では、そうした懸念は不要です。

「電子マネーの残高は、年明けと共に1%減らされます」と法律で決めれば良いのです。その1%は、税金として徴収しましょう。まあ、電子マネーの残高はそれほど大きくないでしょうから、税収といっても僅かでしょうが。

■資産課税で「所得の少ない金持ち」からの徴税が可能に
さて、チョッと突飛な発想ですが、頭の体操をしてみましょう。現金が持てないとなると、個人金融資産はすべてマイナンバーと結びつけることが出来るので、資産課税が可能になります。毎年の年初に個人金融資産に一律1%の税を課すのです。

銀行預金だけに課税すると、課税を逃れるために銀行が預金ではなく社債を発行して資金を集めるようになるかも知れません。あるいは「個人が銀行に預金して銀行が企業に貸し出す」代わりに企業が社債を発行して個人に売る(進化系としては、企業の社債を購入する投資信託を個人が購入する)かもしれません。しかし、社債や投資信託もマイナンバーで把握できますから、預金と同様に課税すれば良いだけの事です。資産を海外に持ち出したら、持ち出した金額の1%を毎年徴税するのです。

国民としては、現金が無いので、電子マネーで持っても銀行預金しても国債を買っても、海外に資産を移しても、金融資産が毎年1%ずつ減っていき、その分が政府の懐に入るわけです。財政赤字は大幅に縮小するでしょう。

■税金が使った罰から使わない罰になり消費が拡大
消費税は、「金を使った者は税を払え」ということですが、金融資産課税は「金を使わずに持っている者は税を払え」ですから、人々が金を使いたくなる制度です。史上最高の景気刺激策かもしれません(笑)。

皆が年末に「駆け込み需要」をすることも期待されます。大増税で景気が悪くなるかと言えば、そんな事はないのです。それでも景気が悪くなりそうなら、所得税を減税しましょう。

この世界の素晴らしい所は、今ひとつあります。今は「金持ちに課税しろ」というと高額所得者に課税することになります。「1億円持っているが所得の無い人」には課税されないのです。これは不公平です。金持ち(文字通り金を持っている人)は金を持っているだけで、日本経済にはほとんど貢献していないのですから(預金も株式保有も少しは日本経済に役にたってはいますが)、彼らから税金を徴収しましょう。一方、高額所得者は、働いて稼いでいる偉い人なので、所得税は減税してあげましょう。

■様々な税逃れはあるだろうが、それは他の税でも同じこと
すべての税金には、税を逃れようとする人とそれを阻止しようとする政府との闘争が不可避です。資産課税は、他の税よりもそれが少しだけ激しくなるかも知れませんが、本質的には同じことでしょう。

たとえば、商品券が現金の代替品として使われるかも知れません。しかし、商品券は発行元がわかっていますから、無限に膨張するようなことがあれば、何らかの対策は可能でしょう。

ドルの現金が国内で流通するようになるかもしれません。それは、チョット困ったことですが、ドル紙幣も預金した途端に課税されますから、巨額のドルの現金が世の中で流通し、タンス預金され、強盗の恐怖と人々が闘うということは、考えにくいでしょう。

以上を総合的に考えると、日本円の現金を廃止して、個人の金融資産に課税する、というアイデアは、突飛すぎますが、悪くないようにも思えます。制度設計を上手に行えば、もしかすると実用可能かもしれませんね。


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