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(要旨)
・日銀の緩和がなければ、政府は「放漫財政」が続けられないのか?逆に言えば、「放漫財政」と「金融緩和」には因果関係があるのか?
・「政府が国債発行で民間銀行から借金する」のと「政府が日銀から借金し、日銀が民間銀行から準備預金を預かる」のと、政府と日銀の連結決算で見れば同じでは?

(本文)
ヘリコプター・マネー論(日銀が紙幣を印刷して政府に貸し出し、それを政府がヘリコプターから散布すれば景気が良くなるという議論)が盛んですが、筆者は賛成反対の前に、何を騒いでいるのかが理解できていません。
普通に国債を発行して、その資金で「放漫財政」を行なうのと何ら変わりが無いからです。ちなみに現在の財政状況を「放漫財政」と呼ぶべきか否かについては大いに議論の余地がありますが、本稿では100歩譲ってそう呼ぶことにします。

(1)政府は日銀のおかげで財政赤字が維持できている?
仮に「政府の財政赤字が大きいので、国債発行での資金調達が困難である」という時には、政府は財政再建に真剣に取り組まざるを得ないでしょう。そうした時に日銀が国債を購入すれば、「日銀のおかげで財政再建が不要になった」という事もあるかも知れません。
しかし、日銀が極端な緩和をやめたら国債は暴落するのでしょうか?量的緩和前から国債の利回りが非常に低かった事を思い出せば、そんな事は起きそうもないでしょう。
そうだとすれば、政府の「放漫財政」と日銀の金融緩和(国債購入)には因果関係が無いということになります。日銀が量的緩和をしても、何もしなくても、政府の財政赤字には何の影響も及ぼしていないからです。
政府も、「日銀に助けてもらっている」「日銀のおかげで放漫財政が維持できている」とは思っていないでしょう。

(2)政府は日銀からの借金を返す必要が無い?
「政府の民間からの借金は将来増税で返済されるが、政府の日銀からの借金は返す必要がない」とか「日銀は一枚数十円のコストで紙幣を印刷して政府に渡せば政府の借金が1万円減る」といった議論を耳にしますが、政府と日銀を連結決算で考えれば全くそんな事はありません。
「政府が民間銀行から借金している状態(民間銀行による国債保有)」と、「政府が日銀から無期限の借金をしていて、日銀が民間銀行から準備預金を預かっている状態」は、連結決算で考えれば同じことです。
仮に政府の借金が増え過ぎて「政府が破産する」という噂から国債が暴落するような場合には、ヘリコプター・マネーを採用していたとしても、「政府が破産するから政府に融資している日銀が破産する」という噂が流れて銀行が日銀への準備預金が大量に引き出すでしょうから、巨額の紙幣が市中に流れ出て超インフレになるでしょう。
日銀が政府への貸出金を免除した場合には、日銀が債務超過に陥りますので、それこそ日銀破産の噂が広まります。銀行は準備預金を引き出しますが、受け取った日本銀行券も持っていたくないのでモノに換えようとします。超インフレです。
つまり、「政府の借金を返さないと危険だ」という議論は「日銀の準備預金を減らさないと危険だ」という議論と同じなのです。要するに、ヘリコプター・マネーによっても「放漫財政が可能になる」とか「放漫財政を改める必要性が低くなる」といった事は何もないのです。

以上のように、筆者には「ヘリコプター・マネー論」というものが何であるのか、理解できていないのです。賛成とか反対とかを論じる段階に達していないということでしょう。
どなたか、御教示いただけると有難いのですが・・・

P.S.
実際には、日銀が破産することはありません。破産というのは借金が返せない事ですが、日銀の場合には紙幣を印刷して借金を返せば良い(準備預金を払い戻せば良い)からです。
しかし、そうなると超インフレが起きることになります。日銀の使命は物価の安定ですから、超インフレが起きることは日銀にとって破産するほど嫌な事だ、と言えるでしょう。
民間銀行としては、「日銀が破産するから準備預金を引き出そう」というのは正確ではありませんが、「超インフレが来そうだから準備預金を引き出して実物資産や外貨などに換えよう」と考えるでしょうから、「取付け騒ぎ」と同じような事態が発生することになります。



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