バレンタインデーってのが本当に嫌だったよ、太っていたからね。
冴えない小学生にとっては特に。小さい子ってのはモテない事を笑いに変えられなくて
恥ずかしいと思っちゃうからさ。
普段女の子に悪態をついてる奴らに天使は微笑むんだから、こっちは陰口の一つも叩いちゃいないよ。
でも2月14日だけ、机の中はうんと綺麗にしておいて、チョコレートが一つ入るスペースを
確保するんだ。
1つってのがいいね、自分の事をちゃんと分析してるよ。ガキのくせに
この空間を占める大部分があきらめで、そこに「もしかしたら、いやまさかな、でも」っていう
淡い期待を添えたもので出来ているんだ。
休み時間の度に自分の机から離れて、授業ギリギリまでトイレにいる、それを5時半のチャイムが鳴るまで続けるのさ。こんな気遣い何でもない日に出来たらチョコレートが貰えたのに、
と気づいたのは大人になってからだよ。
まあだから結局、その空間に入るのは、いつもマイマザーのチョコレートだったよ。
何が嫌だって母の心に映る悲しみを見て取れる事なんだ、どんあに明るく振舞ってようと、
この日のデブは365日で1番鋭いんだから。
母だって、少しの期待をしてるんだ、だから余計にこっちも寂しい気持ちになってね。
ある時嘘をついたのさ。
「もらったけど、学校でたべた」って
バレバレだったろうね、その年以来「チョコレートはもらえた?」って台詞聞かなくなったもの。
僕が一番関係ない日に一番気を遣って、母にまで申し訳ない気持ちにさせたバレンタインデーが本当に嫌だったよ。
最後に12の時本命チョコを貰ったんだ。
好きな子のお母さんにね。好かれてはいたんだろうが
「大好き○○より」
って書かれた日にはなんかね。
とにかくイかれてたよ、あの子のお母さんは。
