彼と歌と希望の泉 | アオイロの恋

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唯一無二のダイヤモンド、中澤卓也君の魅力を語ります。

 

 

 

 

歌ごころ#021 『奏』スキマスイッチ


「歌があれば、僕らはいつもつながっていられる・・」

歌に託された想いと希望。


別れゆく若者の情景を描いた歌詞は『なごり雪』を彷彿させる。

『奏』も『なごり雪』も、彼らを繫ぐ記憶のツールが言葉ではなく「雪」や「歌」であるところが、想いの純真さを際立せ、二度と戻ることのない青春の儚さに胸が苦しくなる。

 

成熟した情念とは違う、初々しい想いのかけら。中澤卓也の透明な声でうたわれる、映像のように鮮明な誰かの記憶が、聴いているこちらの記憶に溶け込んでくる。曖昧になった記憶の境界線に佇みながら、初めて触れあった血潮の熱さを思い出して心が萌え立つのを感じる。

後に残るのは甘く苦い涙と、ほのかな胸の痛み。


人の記憶はしばしば思いがけないきっかけでプレイバックすることがある。中澤卓也のうたは、静かに頬をかすめる緑の風のように、類まれな声と多彩な表現のちからで、記憶の地層に埋もれた想いを蘇らせてくれる。

そこで喚起されるのは、誰もが経験したかも知れない最大公約数の思い出であると同時に、ごく個人的な「私だけの体験」でもある。それは日常にありながら経験できるキセキなのだろう。

 

歌い終わり、自らの大切な記憶を確かめるように、そっと目を閉じる彼の姿が印象的だ。

 

 

 

『おうち時間#9 ~おうちLive vol.4~』


中澤卓也が、リアルタイムでうたを届けてくれるライブの6度目。

 

今回は、音声、カメラの角度、楽器の響き、等々、全てにおいてこれまでよりもさらにブラッシュアップされた内容だった。回を重ねる毎にどんどん完成度を上げてくるのは本当に驚くばかり。これだけのレベルの生配信をしているアーティストはそういない気がする。

曲と曲の間にギターのチューニングをする卓也君の何気ない姿がとても絵になっていて美しかった。


毎回決まってうたわれるオープニングの『青いダイヤモンド』と、エンディングの最新曲『北のたずね人』。どちらもいつにも増してすこぶる良かった。

そして今回はカヴァーが二曲。ウルフルズ『バンザイ』と、平井堅『僕は君に恋をする』。


『バンザイ』は、秘密兵器(笑)ルーパーを使用したリズムセクションが楽しく、大いに盛り上がった。卓也君持ち前のサービス精神が嬉しい。


『僕は君に恋をする』

普段滅多に泣かないという卓也君が、この曲を聴いて泣いた・・

そう話すところがグッときた。

 

男性によって書かれた男性主観の歌詞で、女性がこの世を去るというのはよくあると思うが、それが男性の方となると案外珍しいかも知れない。このあたりはさすがに平井堅という感じがするし、こういう世界観に感情移入する卓也君がいかにも彼らしくて愛おしい。


このカヴァーの感想に関しては、本当は書くこと自体まどろっこしい気がする。所詮言葉では、うたに込められた想いを語り切ることは不可能だからだ。まあ、それでも書かずにはいられないのだけど。


「音楽の力」という言葉をよく耳にする昨今だ。

それは今、有事ともいえるこの状況に晒されて以降、さらに顕著になった気がする。しかしここにきて「音楽の力」という言葉ではおさまり切らない、最早「凄み」としか言いようのないものを目の当たりにしてしまった。これは理屈ではない。本能なのだ。想いを伝えるために叫びうたう、身体全体から湧き出る感情の発露そのものだ。

 

若い彼の中に滾る溢れんばかりの感情が、行き場の無い抑制されたパトスが、その全てがうたにそそがれる。ギターの弾き語りという、ごくシンプルな表現だからこその生々しいまでの鮮烈さ。それは、表現における唯一無二の純度という点において、あの忘れがたい『桜井の訣別』を彷彿させるものでもあった。


いつも思うのだけど、さらに特筆すべきなのは、今回を含む全ての映像が、アーカイブとして残されているというところだ。今のご時世に、こんな大盤振る舞いが普通に存在するとは信じられない。

 

これは単に中澤卓也ファンにとって嬉しいというだけではない。

シンプルな機材で完成度の高い表現を見せる、そのノウハウの詰まった映像の全てを惜しげもなく公開することは、表現行為にかかわるすべての人にとっておおいに参考になるのではないかと思う。


私は、音楽でも絵画でも映画でも、一番最初に見聴きした時の印象が全てだと思っている。そういう意味では、やはり生のステージを体験するのは特別なことだ。

けれども繰り返し同じ映像を目にすることで、より深く感じることが出来るし、意識的に視点を変えれば同じものでも毎回違う発見がある。こんなふうに、見る側もまた表現者になりうるのだ。

 

 

ところで話は変わるけれど、少し前にやっていた山内惠介さんの生配信で、彼がアカペラで歌い上げたミュージカル『キャッツ』の中の一曲、「スキンブルシャンクス」は圧巻の素晴らしさだった。本人は、お喋りの続きの何気ないハナウタ程度だったのかも知れないけど、あれほどの歌唱がたった一度きりの配信でアーカイブに公開されないのは本当に勿体ない。あの数分間だけでも是非公開するべきだと思う。

 


話を戻すと、このように、非常に制限された環境下での表現という行為について、真面目に真正面から向き合い続けるチーム中澤の功績は、後々評価されることになると私は(勝手に)確信している。

 

そして、汲めども尽きること無く湧き続ける泉のように、中澤卓也のポテンシャルは無限だ。

 

改めてそのことに気付かされたから(未だステージを観ることは出来ないけれど)今は本当に嬉しくて仕方がない。

 

 

 

 


(最後まで読んでくださった方、ありがとうございます!)