「あなたはどうなの?」
「私?」
「そう、シオンのことはともかくとして、あなたは?
2人のヨンジェさん。
なにか、あるんじゃない?」
「……なにか。かぁ。」
手元に出されたコーヒーカップ。
その中のコーヒーを見つめる。
彼女の笑顔が見えた気がした。
「……もっと。好きな事させてあげたかったなーとか、私は泳ぐことしかできなかったけれど。
時間の猶予があったなら、ダブルデートみたいな思い出も作ってあげたかった。
ほら、彼女もファンの1人だったわけだし。」
伯母は隣に腰をかけると、私の話を黙って聞いてくれた。
ヨンジェさんとの水泳教室。
最後が近いと知った上でやった教室。
誕生日のあと、二人に渡した『永遠』の象徴は今も先生の手首に添えられている。
そう『永遠』
自分からそう渡しておいて、今更……
私、何しているんだろう。
「いのり?」
「ん?」
「何、考えてるの?
……何か、後悔?」
「……後悔ばっかりだよ。
二人を引き合わせるべきじゃなかったのかも……先生に悪い事しちゃった。」
「……シオンのためを思ってくれたんでしょ?」
「結果的に、辛くさせたんじゃないかな……」
「大丈夫よ。……ああ、見えて、人の気持ちはわかる子よ。
あなたに悪気が無いことくらい、察してくれているわよ」
「……だといいんだけど。」
「ママー」「マンマ―」
昼寝していた二人の声が奥から漏れてくる。
「ほら、起きたっ。おやつ食べさせてもいい?」
「うん、ありがと」