「ギブンっ!
あんたねぇっ!」
雲のように現れたミンジェは、すぐさま目の前のギブンに詰め寄った。
「……」「……騒々しいな。」
ギブンの横、無言で佇むジミンが目に入る。
ミンジェは驚いていた。
ギブンの横にいても、ジミンは平然とした顔をしていた。いつかの恐怖に震えるジミンは、そこにはいない。
「こっ、この子に何をさせる気っ!」
「……狩りの手伝いだ。」
「狩り?」
ミンジェは眉間に深いシワを寄せて見せた。
「こいつの声を奪い、人間に転生させた……重罪野郎をだ。」
「……それって。」
ミンジェはジミンの顔を伺うように視線を向ける。
ジミンは無表情のまま。
「ルナとか言ったな……あの母猫。
ペナルティの対象はそれだけじゃない。
……あいつの罪は重いぞ。……どれだけ人間を憎んでいるんだか……」
「……ジミナ?」
ミンジェは顔色ひとつ買えないジミンが逆に心配になり、声を掛けた。
「……さっき、全部聞いたよ。
もう、迷いはない……僕は……母さんを狩る手伝いをして、カナさんの死相も消して、僕の声も取り戻す。」
ジミンは淡々とタブレットにペンを走らせた。
静かな眼差しの中、ミンジェはジミンの決意を知った。
「……辛くなったら、いつでも帰っておいで。カナと先生には私から説明しておく。
それから、ギブン。
どうか、そのルナって猫も、できるだけ楽にさせてあげてね。」
「……それは、相手次第だろう?
それに、こいつも常に隣に置いておくわけじゃない。
必要な時に必要なだけ、利用させてもらう。
……今日はもう帰っていいぞ。」
「……」「それじゃぁ、行こう。ジミン」
ミンジェが手を伸ばすと、それでも力なくその手をとるジミン。
2人は雲のように飲み込まれるように消えた。
1人取り残されたギブン。
ポケットからタバコを取り出し、火をつけて咥える。
ひとつ煙を吐き出すと、その煙が漂う様をじっと見つめた。