「ご、ご馳走様でした。」

慌てて、食器を重ねて立つと、キッチンに向かうカナ。


「あっ!」

気づいた時には、また何も無いところでつまづいて、段差で足を踏み外して、顔から床に倒れてしまったカナ。


手に持っていたはずの食器が宙を舞って、カナの頭上に落ちた。

けたたましく割れる音と、ぶつかる音。


「……イタイ」


「……大丈夫か。

ごめん、間に合わなかった……あー、危ないから動かないで。」


「……ダイジヨウブです

スミマセン、食器、割ってしまって……」


「それより、怪我は?」

 

「ナイと思うんですけど、アゴが痛くて……切れましたかね。」

顎にあてていた手を、そっとどけると、割れた破片で切ったのか、血が出ていた。


「……少し切れてる。……動かないで。

手当てするから。

待ってて……」

そう言うと、ユンギは道具を取りにその場を離れた。



ユンギはカナの顎を消毒して、傷口を覆うように絆創膏をあてがった。

 

「傷も小さいから、跡にはならないと思うけど……


どうする?買い物……

やっぱり、やめておく?」


「行きます。」「ん、了解」

辞めるかと問うて見たものの、行くと返事してくれたことが、嬉しいユンギはすぐに答えた。


ユンギは割れた破片を片付ける時も、食器を洗って片付ける時も、鼻歌を混ぜたい気分だった。

2人で出掛けられる。

以前は、昼間2人で出かけるなんてしなかった。


やっと、公に出掛けられる。

誰にも知られてはいけないとか、そんなことも考えなくていい。


ユンギは頬が緩むのを感じて、必死に冷静を装う。