「体温が高すぎる」

測り終えた体温計は40度を示していた。


「……大丈夫。

休めば、そのうちに戻るから……」

苦しそうにミンジェは答えた。


「死神も、熱を出すんだ。」

ジミンのタブレットは、淡々と言葉を発する。


当のジミンは、隅の方に小さくうずくまったまま。


……怖かった。

人間に転生したとは言え、猫の感覚がまだ残っていると感じた。


空気、というか殺気を感じた。

ここで見たミンジェの感覚。

そして、それ以上に近寄り難いほどの殺気と狂気の入り交じった感覚。声は男だった。

ドアの向こう、自分を『元獣』と把握していたから、きっとミンジェと同じ死神だったんだとジミンは思った。


改めて感じた、今あるこの状況の異様さ。

ユンギから聞いた『濃い死相』。

あらゆるところから、来るであろうカナを『死』に追いやろうとする出来事。


ジミンは不安だった。


カナを守りたい。

……でも、守れるのだろうか?


「……大丈夫?


帰ってきてから、この騒動だったから休んでないでしょ?

部屋で休んで。」

声をかけてくれたカナの顔を見た途端、涙が溢れそうになる。


無意識だった。

ジミンはカナの手に自分の手を伸ばしていた。

触れることで安心したかったんだと思う。


「……カナ。

一緒に……いてあげたほうがいい。

……その子、

けっこうなトラウマになったかも……」


「え?」「…………」

ジミンは取ったカナの手にすがるように額を寄せた。


「……ほんのうかな。

ギブンがもつ、

狂気とか……その子にはわかるんだと思う。」

ミンジェはボソボソと話す。


「……オレも。

恐怖や、威圧感みたいな雰囲気で、声すらもまともに出せなかった。」

ユンギも続けた。


「カナ。……ジミンと一緒にいてあげて。

こっちは、オレが付いてるから。」


「は、はい。


ジミン?……行こう?」

ユンギにそう言われて、ジミンに握られていた手をまたカナは握り返す。