「きゃあっ!」

ガシャンっ!


カナの悲鳴まじりの声と、何かが落ちて割れる音。


ユンギはベッドから飛び起きた。

外はまだ日が昇るか上らないかの薄暗い時間だった。


「どうしたっ!?」

声のしたところ。

バルコニーだった。


尻もちを着いた形で呆然としていたカナ。


「……どこか怪我を?」


「……大丈夫です。

でも……」

カナが指指した方、手摺が一部外れたのか、不自然になくなっていた。


ユンギの部屋は3階。

ユンギが下を覗くと、無くなっていた手摺がそのまま下に落ちていた。


「……少しそこに寄りかかっただけなんですけど。

急に落ちて……」

怖がった様子のカナ。


「……しばらく、ここにも来ない方がいい。

それから、外にも出ないで。


あとは、キッチンも。


それから……」


「あの、」


「ん?」


「……それじゃぁ何も出来ませんよ?

……ここに、軟禁状態でいろと?」


「……しょうがないよ。

いつ収まるかも分からないんだ。


……自分もしばらくはまだ仕事につかないでおくから。

できることは、俺がやる。」


「……そんな。」


「……いや、でも……ジミンにも協力してもらわないとだな。」


「…………」


「気にしないで。

……いつかは、治まる。」


「そうなったら、私も働き口を探します。

……ちゃんと家賃も支払って、それから……住む場所も……探します。」


「……カナ。

俺は……」


「ダメです。

そこは、ちゃんとさせていただきます。」

カナはそう言って立ち上がる。


ユンギには、あの日『別れ』を告げられた日のカナが重なった。


ユンギの答えも聞かずに、あの日は向かう矛先まで変えられて。

挙句の果てに、数日後には事故にあって、2年も目を覚まさなかった。


今度はどうなってしまうんだろうか?

……本当に、この2年間の死相が一気にたたみかけてきているのだとしたら、事故では済まされない。そんな気がして、


……彼女を失ってしまう。


「…っ!」

そう思った瞬間、ユンギは彼女の手を取った。