退院祝いの席が終わると、ジミンはバイトがあるからと部屋を後にした。


ミンジェもいつの間にか姿を消していた。


家に残ったのはユンギとカナ。


2人はキッチンにいた。

食べ終わった食器を洗ったり、拭いては片付ける。

2人は隣合うものの、ほとんど会話はなかった。


「……ん」

高くにある棚に、皿を片付けようと手を伸ばすカナ。

届かないと悟って、踏み台を近くに引き寄せた。


たった2段程の台に上がって、再び手を伸ばす。

と、何故かバランスが崩れて、カナは背中から倒れそうに。

気づいたユンギが、すぐさまカナを支えた。

咄嗟の出来事に、置いてあった包丁に触れてしまったユンギ。


触れた包丁が、2人のすぐ近くに落ちて、床に突き刺さった。


「大丈夫か?」


「……は、はい」

ユンギに抱きしめられる形で難を逃れたカナ。


そこへ、再び現れたミンジェ。


「お、……よかった。間一髪だったかな。」

少し安心したように呟いたミンジェ。


身体を離したユンギとカナ。


「……すみません、ありがとうございました。」

そう言って、身体を折ったカナ。

刺さった包丁を手にシンクに向かおうとしたところで、何もないところでまた躓く。

躓いたと思ったら、包丁を持ったまま、転びそうに。

あろうことか、包丁が先に手を離れて、床に落ちた。

そして、不自然に刃の部分が上を向いた状態で止まる。


危ないとユンギが思った瞬間。

ミンジェの身体が動いて、今度はミンジェがカナを受け止めた。


「ん」

ミンジェの背中には刃を向けていた包丁が。


「ミンジェさんっ!?」

驚いて、身体を離したカナ。


「……大丈夫。

痛いけど……大丈夫。」

ミンジェは顔をゆがめながら、背中に包丁を付けたまま立ち上がった。


「ハァ」

ユンギは胸をなでおろしていた。

こう何度も危ない目に合うなんて。

そんな不安が募っていった。


「……ミンジェ。これって?」

ユンギはミンジェに尋ねた。


「…死相が濃くなってる。

2年分のシワ寄せが一気に来てる感じだね。

……しばらくすれば、収まるとは思うけれども……」


その時、ミンジェの携帯がなる。


「はぁ……

またペナルティかな……」

携帯の画面を見たまま、悲しそうな目でつぶやくミンジェ。


「……ミンジェさん?ペナルティって。」


「いいのよ。

したくてしたことだから。

それに、ビーズの作り方教えてもらうまでは、あなたに死なれたら困るもの。」

そう言ってミンジェはカナに力なく笑って見せた。


「行かなきゃ……


先生?しばらくはこの子見張ってて。

何が起きてもおかしくないから。」


「……ああ」

ユンギは答える。


「じゃ。」

ミンジェは片手をあげると、雲のようにいなくなった。


「ミンジェさん……」

カナはミンジェの悲しそうな表情が気になった。