今回読んだのは、
『私は逃げるとき、いちばん勇敢な顔になる』
著者は、
ユン・ウルさん。
韓国の編集者の方です。
これまでにも
ベストセラーを出されていて、
総販売数は
120万部を超えるそうです。
この本は翻訳本で、
2021年の優秀出版コンテンツ
にも選ばれているとのことでした。
タイトルにもある通り、
テーマは
**「逃げること」**です。
さらに、
この本には
もう一つ大きな特徴があります。
イラストを担当されているのが、
キム・スヒョンさんだということです。
日本でも有名になった、
『私は私のままで生きることにした』
あのベストセラー本を
出された方ですね。
もしかすると、
著者の方よりも
イラストレーターの方のほうが
知名度があるかもしれません。
そんな一冊なんですが、
読んでみて
興味深かったこと、
参考になったことを
いくつかお話ししたいと思います。
逃げることは、大切。でも「その後」も大切
まず、
この本の中心にある
「逃げる」というテーマについてです。
私自身も、
逃げることは大切だと思っています。
自分が苦しんでまで、
無理にその場所に
居続ける必要はない。
それは本当にそうだと思います。
ただこの本では、
逃げることそのものだけではなく、
どうやって逃げるのか
どのタイミングで逃げるのか
そういったことも
大切だと書かれていました。
たとえば、
韓国のプロ野球選手の例が
出てきます。
その選手は、
日本のプロ野球で
シーズン中にプレーしていたそうです。
けれど、
東日本大震災などの出来事もあって、
シーズン途中で
韓国に戻ってしまった。
その結果、
韓国国内で
かなりバッシングを受けたそうです。
ここで著者は、
逃げるタイミングも大切
ということを伝えていました。
たしかに、
逃げることには
その後の影響もあります。
どう見られるか。
どんな場所に移るのか。
その先でどう生きるのか。
そこまで想像できれば
理想なのかもしれません。
ただ一方で、
そこまで考える余裕がない人も
いると思うんですよね。
本当に苦しいときって、
とにかく今の場所から
離れたいと思うだけで精一杯だったりする。
だから私は、
逃げるという選択肢が
一つあってもいいと思う一方で、
逃げた先をどうするか
も、できれば
一度考えておいたほうがいいのかな
と思いました。
というのも、
逃げた先でも
また居心地が悪くなってしまうと、
結局また逃げることになってしまう。
それが
負のループになることもあるからです。
この本の中では、
「諦める」と「逃げる」は違う
とも書かれていました。
諦めるというのは、
その場に居続けながら
心を閉ざしてしまうこと。
逃げるというのは、
別の道を探すこと。
この違いは
とても大きいなと思いました。
逃げることは、
決して負けではなく、
次の場所を探すための行動
なのかもしれません。
「第二の矢」に気をつける
次に印象に残ったのが、
第二の矢
という考え方です。
最初にこの言葉を見たとき、
正直
何のことだろうと思いました。
第二の矢があるなら、
第一の矢もあるはずですよね。
この本で言う
第一の矢というのは、
何か嫌なことが起きたときに
最初に生まれる感情のことです。
たとえば、
イラッとする。
悲しくなる。
ショックを受ける。
それは、
出来事が起きた瞬間に
自然に湧いてくる感情です。
これはもう、
ある意味
仕方のないことでもあります。
嫌なことがあれば
嫌な気持ちになるのは自然です。
問題はその次です。
それが
第二の矢です。
最初に生まれた感情を、
そのあと
自分がどう扱うのか。
引きずるのか。
さらに自分を責めるのか。
あるいは、
そこから切り替えるのか。
そこが大切だという話でした。
この考え方は、
とても納得感がありました。
第一の矢は避けられない。
でも、
第二の矢は
自分次第なところがある。
嫌なことが起きたあとに、
その感情を
ずっと持ち続けるのか。
あるいは、
少しずつでも
手放していくのか。
そこに
自分の生き方が出るのかもしれません。
私自身も、
嫌なことがあれば
やっぱりイラッとすることもありますし、
落ち込むこともあります。
それ自体は
仕方がない。
でもそのあとを
どうするか。
まさに
第二の矢に対して
どう振る舞うかが、
すごく大切なのだと
あらためて思いました。
心理学の話として読むと、かなり面白い
この本では、
逃げることの大切さについて
書かれているんですが、
その内容は
かなり心理学寄りでもあります。
いろんな事例が出てきますし、
心理学の考え方も
たくさん盛り込まれています。
だからこそ、
読む人によっては
少し難しいと感じるかもしれません。
実際、
この本は
韓国本コーナーに置かれていたんですね。
イラストを担当している
キム・スヒョンさんの本が
並んでいるコーナーにありました。
それはそれで
見た目には違和感がないんですが、
私は読んでいて
少し思いました。
これは本当に
そのコーナーでいいのかな、と。
内容としては、
かなりしっかり
心理学に踏み込んでいます。
300ページほどある本ですし、
人によっては
読みづらいと感じるかもしれません。
だからもし私が編集者なら、
韓国本コーナーというより、
心理学コーナーに置いてもらえるよう
働きかけるかなと思いました。
もちろん、
韓国の本だから
韓国コーナーに置かれるのは
自然なのかもしれません。
でも本来は、
誰に読んでほしいか
に合わせて
置き場所を考えたほうが
いいのではないかとも思いました。
そういう意味では、
中身と見た目の印象に
少しギャップがある本かもしれません。
かわいらしい装丁や
イラストから入ると、
思ったより
しっかりした内容で驚く人も
いるかもしれませんね。
自分を追い込みすぎている人へ
全体を通して感じたのは、
この本は
自分を責めすぎてしまう人
逃げることに罪悪感がある人
そういう人に向いている本なのかな
ということです。
逃げることは
悪いことではない。
でも、
ただ感情のままに
逃げるだけでもない。
その間にある
微妙な感覚を、
心理学の視点を交えながら
丁寧に言葉にしている本でした。
結局大切なのは、
自分の状態を知ること。
相手の立場を考えること。
そして、
自分を追い込みすぎないこと。
もし今、
何かに耐え続けていて
苦しくなっているなら。
あるいは、
逃げたいのに
「逃げてはいけない」と
思い込んでいるなら。
この本は、
少し違う見方を
与えてくれるかもしれません。
逃げることは、
弱さではなく、
ときには
いちばん勇敢な選択なのだと。
そんなことを
静かに教えてくれる本でした。

