マリンピアの蜃気楼 | スイーツな日々(ホアキン)

スイーツな日々(ホアキン)

大好きなスイーツと甘い考えに彩られた日々をつづっていきたいと思います。

平日なのに人が多いわ。
そうか、セールの時期なのね。

垂水のアウトレットモール、マリンピア神戸。
海と空が眩しい。
神戸には何年いたのかしら。
3年ぐらい?
まだ東京に戻って3年なのに随分と昔のことに思える。

三田(さんだ)のアウトレットも行った。
時折利用した御殿場のアウトレットと似ていて使いやすかった。
夫の話では、三田も御殿場も三菱地所が経営しているから似ているのだそうだ。
そういえば、マリンピアは三井不動産ね。
でも、よく行ったのはマリンピアの方。
三田のは何か吹きさらしのような印象があったし、それに彼とのデートにも使えなかったから。

彼は私が神戸でパート勤務していた損害保険の支社に出入りしていた。
通信関連の広域営業マン。
些細なシステム変更があると、立会いにきたり、操作方法の指導もしていた。
お茶を出しているうちに、私が毎日は勤務していないことを知り、ランチに誘われたのだ。
システム変更は週末になることが多い。
そのため、彼は平日に代休を取っていた。

最初に行ったのはメリケンパークオリエンタルホテルの「石庭」。
海が美しく見えた。
近畿全域をカバー範囲にしている彼の話は、関東育ちの私にとって新鮮で面白かった。
ランチとお茶だったデートは、いつしかドライブに変わった。
と言っても、子どもたちが学校から帰ってくるので、遠くに行くわけではない。
要するに、車でないと行きにくい場所、車なら目立たない場所で二人だけになるためだった。
初めのころは、三宮駅近くの駐車場にお互いの車で行き、そこで彼の車に乗り換えるという方法をとっていた。
ところがある日、パート仲間にばったり会ってしまい、三宮駅近くはまずい、と思うようになった。
神戸では名谷に住んでいた。
車でも近いマリンピアがその代わりになったのだ。

あれは愛だったのだろうか?
分からない。
転勤先でも仕事一筋の夫に対する腹いせだったのか?
そうではない。
部屋に入ると「愛している」と繰り返し口にした彼。
私は「ありがとう」とは答えたが、「私もよ」と言ったことはない。
夫の東京転勤が決まった後、私たちは会うこともなかった。
「転勤するのよ」
「いつ」
「1週間後」
「急なんだね。会えない?」
「会えないし、会わないわ」
「悲しいよ」
「それじゃね」
電話でもない。
淡々としたメールのやりとりだけで、終わった。
なのに、涙が流れていたらしい。
「ママ、どうしたの?」
帰宅した娘が私の涙の痕を指摘した。

私には年子の娘が二人いる。
東京に戻ったときに、6年生と5年生。
すぐに受験ママになった私と一緒に、嵐のような受験戦争?を乗り切り、二人とも希望の中学に合格できた。
「旅行でもしてきたら?」
試験休みの時期が暇になるわ、と夫と話していたら、そう言ってくれた。
家にいれば優しい夫だった。
娘二人に聞くと「神戸に行きたい」という答え。
友達に会いたいのだという。

そして今日。
娘たちは、神戸の友達と一緒に三宮で遊んでいる。
「ママは一人で行きたいところがあるんじゃないの?」と長女に言われ、半日自由の身になった。
あの娘は何か気づいているかもしれない。
それにしても、何故マリンピアに来たのかしら。
UNITED ARROWS、agnes b. 、ANTEPRIMA、JILL…。
いろいろな店があったのね。
全然気が付かなかったわ。

今日は電車で来た。
露天の駐車場の横を通る。
日傘をささないと焼けちゃうわ。
眩しい。
車を降りてきょろきょろしている男性がいた。
あれは…、彼?
私を認めて笑顔になっている。
こちらに歩いてくるわ。
気温は35度。
猛暑が私を朦朧(もうろう)とさせ、錯覚を起こしているのかもしれない。
暑いわ。
私、どうなるのかしら。