ショーケン  、陽水と続いた  アガワの 「わが青春のスター」 を訪ねる旅。トリはこの人、ジュリー。『君だけに愛を』 で少女たちを失神させたあの日, 『TOKIO』 で茶の間をア然とさせたあの時、ジュリーこそスターだった。心躍るアガワの前に、あのジュリーが笑顔で現れた。

  田中裕子の行き方に感化されてます (笑)

阿川 日曜日にお出向きをお願いしたしまして、申し訳ございません。

沢田 いや、日曜日は仕事があるほうが多いですから。

阿川 普段の生活は、やはり夜型でらっしゃるんでしょう。

沢田 若い頃はそうでしたけど、最近は8時半とか9時頃に起きて、朝、ゆっくりお茶飲んでっていう風になったんですよ。やっぱり40過ぎると、健康のことを考えないと、ハハハ。

阿川 へぇ、じゃあ、朝ご飯を召し上がって、ちょっとゆっくりして・・・・。

沢田 まぁ、ゆっくりもしてられないんですけどね。猫とか犬がいるから。

阿川 そんなにたくさんペット飼っていらっしゃるんですか。

沢田 ええ。雑種の犬が1匹と、最近また野良猫を2匹飼って。他にも、数えたら野良猫が8匹ぐらい入れかわり立かわりご飯食べに来るんで、「あっ、このコはもう済んだ」 とか、2人で餌やってると、時間が経っちゃうんですよね。忙しいです、朝夕は (笑)。

阿川 微笑ましい光景 (笑)。もともと動物がお好きだったんですか。

沢田 僕より家内のほうが好きで。僕は子どもの頃から、そんなに好きではなかったんですね。犬なんか怖くて、道歩いてて向こうから犬が来たりすると、あとずさりして帰るほうでしたから  (笑)。

阿川 決して好きなほうじゃなかったけれど・・・・。

沢田 なかったけれど、やっぱり一緒にいる人の影響受けるもんですね。僕、影響受けやすいです。

阿川 それ以外で、お暇な時は何を ?

沢田 ボーッとしてるか、旅行してるか、でなけりゃ食べ歩きや飲み歩きをしてるか、そんなところですね。

阿川 食べ歩きはお好きですか。

沢田 2人とも好きなんで、何かあると、すぐかこつけて。この間もジャイアンツが優勝したから、「ヨシッ、今日は行こうか」 とかって。

阿川 あれっ、沢田さんってタイガースファンじゃないんですか。

沢田 いや、チームとしては一応阪神なんですけど、あまり応援しがいがないし (笑)。 長嶋さんが、昔から好きなんですよ。

阿川 私、沢田さんにぜひ伺いたいと思っていたことがあるんです。タイガース時代から始まって、ずっときれいだ、カッコいいって言われ続けましたよね。ご自身は、美男子であることをどう思ってらっしゃるんですか。

沢田 うーん、いいも悪いも親にもらったもんだからね。

阿川 二枚目であることが重荷になることはありますか ?

沢田 重荷というか、舞台やるにしても何やるにしても、「今までと違うお前を出せよ」 って、そういう期待をして欲しいとは思いますね。「今まで通り、二枚目芝居をしてくれたらいいんです」みたいなことを言われると、そうじゃない、もう髭伸ばしたるぞ、って思う (笑)。「見てくれだけや」 って言われてるような気がするんですね、本人としては。だから、それは言わないでちょうだい、触れないで話できないかなっていうのはありますよ、いつも。

阿川 美男子の七光りみたいなもんですね。

沢田 それと、人が言うことを気にする質だから、どうしたって自信が持てないんですよね。

「ジュリーの歌の実力は十点満点で五の下ぐらいかな」 と言う人がいると、他の人に 「歌うまいじゃん」 って言われても、「そやないんや」 って思うんですよね。

阿川 えーっ、自信がなかったんですか  !?  今はどうなんですか。

沢田 今なんか、なおさらありませんよ。だからってわけでもないんだけれど、普通でありたい、普通の人でありたいと思ってるとろこがあるんですよね。

阿川 へぇ。たとえば、どんな風に ?

沢田 僕らが焼鳥屋行ったら、やっぱり店の人とかお客さんがビックリする。でも 「近所だから、また寄せてもらいます」 なんて続けて行ってるうちに、だんだん普通に扱ってもらえるようになる。それまで行き続けるの。あと、人を引き連れて、堂々と道を歩くのは気恥ずかしいです。沢田研二だって人に思われるより、一人で歩いて気づかれないほうが、やったぁって思う(笑)。

阿川 ショーケンがこの対談に出てくださった時に、テンプターズで急に人気が出た時、こんなのは嘘だと思った、それで怖くてしょうがなかったとおっしゃってたんですが、ジュリーはタイガースでバーンと人気が出た時どう思ってらっしゃいましたか。

沢田 売れるということはやっぱり面白いですよ。日本一になるんだとか言ってましたけど、それはあくまでも夢であって、実現するとは思ってなかったから、「ええっ、ここまで来るとは思わなかったよね」 って。僕なんかホント、こんなにお客さんが入ってるんだ、こんなに忙しいんだって驚いてた。雑誌の取材で神田界隈の出版社を次から次へと回って、裏口から逃がされるとかね。そのすべてを、しんどいと思いつつも面白いなって思ってて。

阿川 人気が急上昇して天狗になってたかなと思うところはないですか。

沢田 タイガースは4年間しかやってなかったから、そんな風になる暇がなかったですね。それと、やっぱりグループだから掟をちゃんと守ろうっていうのがあるわけですよ。

阿川 掟 ?  そんなもん、あったんですか。

沢田 ファンとは個人的な付き合いをしないとか、合宿生活してたから、1人でよそに泊まりに行かないとか。帰らないとうるさいのがいるんですよ、森本太郎とか瞳みのるとか (笑)。

阿川 でも、この子、可愛いなと思ったりしたことはあるでしょう ?

沢田 そりゃ、全くないわけじゃないけど、僕は、一番後にメンバーに入れてもらったんですよ。だから、みんなに頭が上がらないわけ。まして一番人気が出てしまったもんだから、ね。

普段はどうも溶け込めなかったというか。

阿川 人気が出てくるとよけい気を遣わなきゃいけなかったんですか。

沢田 うん。別々に住むようになって、それまではみんな同じ給料だったのが、「沢田、ちょっと来い。お前は他の奴より多いんだぞ」 と知らされる。「ちょっと待ってくださいよ」 って言いながらも、「そうですか」 って (笑)。 そうなってくると、僕なんかますます肩身が狭いという思いがありましたね。

阿川 メンバー同士で喧嘩しました ?

沢田 そりゃ何回かはしましたけど、言われてるほど頻繁じゃないですよ。ただ最近、加橋かつみが 「あいつ  (ジュリー) とはずっと友達じゃなかった」 と書いてるけど、そう書かれると確かにそうだったなとも思うね。当時、僕に話しかけてくれたのは、サリー (現・岸部一徳) とタロー (森本太郎) ぐらいしかいなかった。それこそ大人になって言えることなんだけど、サリーやタローは人気はどっか諦めてるようなところがあった (笑)。 でも、ピー (瞳みのる) もかつみも、まだ 「沢田には負けたくない」 って欲があるわけだ。だから、揉める時は揉めたってことでしょうね。