74冊目 わたしを離さないで(再読)/カズオ・イシグロ | ヘタな読書も数撃ちゃ当る

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ある日突然ブンガクに目覚めた無学なオッサンが、古今東西、名作から駄作まで一心不乱に濫読し一丁前に書評を書き評価までしちゃっているブログです

「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ著・・・★★★★★(再読)

 

自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。キャシーが生まれ育った施設ヘールシャムの仲間も提供者だ。共に青春 の日々を送り、かたい絆で結ばれた親友のルースとトミーも彼女が介護した。キャシーは病室のベッドに座り、あるいは病院へ車を走らせながら、施設での奇 妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に極端に力をいれた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちの不思議な態度、そして、キャシーと愛する人々 がたどった数奇で皮肉な運命に……。彼女の回想はヘールシャムの驚くべき真実を明かしていく――英米で絶賛の嵐を巻き起こし、代表作『日の名残り』を凌駕する評されたイシグロ文学の最高到達点

 

 

私は同じ本を2回以上読む(再読)という事はまず無い。再読する暇があったら他の名作を読みたいのだ。

 

 

このブログで評価している本で★★★★☆以上のものは、それでも再読する価値がある作品だと私的には思っている。

それらの作品は感動する事はもちろん、奥が深い、味わいがある、謎めいているなどといった要素を持った作品である。

という訳で今回は奥が深く、謎めいた本書を再読してみました。

前回の寸評は、読んでから暫く経ってからの感想だったので、ちょっと素っ気無さ過ぎた。

 

本書は主人公(キャシー)が直接、読者に語りかけるといった文体で、淡々として抑制が利いた語り口になっている。

この文体がこの驚愕のストーリーをさらに際立たせている。

序盤で出てくる「提供者」「介護人」「施設」「回復センター」「保護官」「マダム」といった存在とは一体なんであるのか、読者にとっては謎めいたまま話は進行していく。

そして、徐々に明かされていく驚愕の実態に読者は愕然とする。

前回読んだ時は、このミステリー的なストーリーで種明かし的な部分のみが印象強く残り、細部を見落としていたが、再読してみると作者の意図することはその細部にあるのではないかと感じた。

この作品は何の前知識無しに読んで欲しいので多くは書けないが、読めば読むほど違った感想を持つようになると思う。

あまりに悲しくやり切れないストーリーなので、孤島にもっていくにはちょっと辛い本だと思いましたが、今回読んでみて何か一筋の光を感じたので評価を一つ上げ最高ランクにしました。

また、読む機会があるかもしれない。

 

 

 

 

 

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