続々・ダカール沈没記 | 旅人日記

続々・ダカール沈没記

Dakar6-1 ひょんなことから出現した沈没仲間のお陰で、こちらもどっぷり沈没気分に引きずられてしまった。
いいかげんにしろ何やってるんだこの軟弱者め、と思われるかもしれないが、これはもうしょうがない話なのである。

考えてみて欲しい。
激烈苛酷な西アフリカに一人突き進むのと、気心の知れた旅仲間との気ままな沈没生活。
魑魅魍魎が闊歩する暗黒大陸と、若い女の子との優雅な都会暮らし。
もう天国と地獄のような差がある別世界だ。
一体どこの誰が自らこの極楽暮らしを捨てて、地獄の猛暑と土砂降りの雨季が待ち受けるアフリカ奥地へと進んで行く気になれようものか。

そんな状況であるからして、旅が一時中断してしまっていても誰も俺を責めることはできないであろう。
強いて言えば「遊んでばかりいないでとっとと帰って来い、この放蕩息子が!」と日頃から温かい声援を送ってくれる両親くらいか。
いや、スマン、ホント申し訳ない。
でもね、この物価の高いダカールで過ごすってことは、その分確実に旅費が圧迫されている訳でして、結果として旅の期間が短くなることなのですよ。
ここでのんびりすればするほど、日本への帰国時期が嫌が上でも早まることになるので、少々ぷらぷらしてしまっていてもどうか大きな心で許してやっていただきたい。

メグミちゃんが来てから、三人部屋を二人でシェアすることになった。
同じ宿にこんな居心地のいい部屋があったなんて今まで知らなかったのだけれど、清潔で広々としてベランダまで付いている明るい部屋だ。
大きな丸テーブルも付いていて、パソコン作業もここなら思うようにはかどりそうだ。
俺が今まで住んでいた安い一人部屋は、狭くて暗い上に小さなネズミまで一緒に住んでいるという、かなり劣悪な環境だったのである。
外に飯を食べに行く時以外はほとんど部屋に引篭もり、それぞれフランス語の勉強をしたり、ホームページ用の情報ノートの整理作業を進めたり、その合間に一緒にゲームしたりしながら、いつものような沈没生活を過ごすことになった。

彼女も語学が大好きで、スペイン語やフランス語の知識は俺よりずっと豊富である。
フランス語の新聞を買ってきては辞書とにらめっこしながら解読を進めているほどだから、気合の入り方が違う。
俺の方はというと「ドラゴンボール」のフランス語版を何冊か買ってきて、流し読みしている程度なのだ。
でも、この日本のマンガの外国語版というのは実は非常に便利な存在なのである。
そのまま旅行会話や日常会話に応用できる会話例が拾いまくれるのだ。
知らない単語が出てきても、画を見ながらだと何となく言っていることが分かるしね。
文法解説書や旅行会話集などで使われているバカ丁寧な言葉遣いではなく、人々の間で日常実際に使われているような極々普通の口調の会話例が学べるのも嬉しい点だ。

ブエノス経由での帰国を決めていたメグミちゃんだが、ダカールに着いてからしばらくは航空券を買いに行くこともなく、その日その日を何気に過ごしている。
ブエノス行きは、最後に日本旅館でのんびりするというよりも、帰国前に他の沈没仲間たちに話を聞いてもらいたかったという気持ちの方が強かったようで、その気持ちも俺と話しているうちに徐々にほぐされていったようだ。
ブエノス行きは取り止めて、スペイン経由で日本に帰る方向を検討し始めている。
俺の方も、なかなか出発への踏ん切りがつかず、この際だから彼女が出るまで一緒にいてしまおうかという気になりつつあった。

と、そんな感じで引き続きダカールでの優雅な沈没生活が続いていくのであった・・・続く。
(オイオイまだ続くのかよ、この不毛な沈没記は!)