マラケシュ | 旅人日記

マラケシュ

Marrakech1 マラケシュ・・・。
モロッコを語る上で避けては通れない町だ。

1070年頃にベルベル人のムラービト朝によって首都と定められて以来発展。
フェズに次いで2番目に古いモロッコの古都である。
次のムワッヒド朝でも首都として引き継がれ、交易・商工業・学問の中心として発展を続け、その伝統は現在にも脈々と受け継がれている。
町は巨大な城壁に囲まれ、周辺は肥沃な緑の大地、さらに遠く南郊には4000メートル級のアトラス山脈が悠々と横たわる。

雑踏・喧騒・混沌。
香辛料の強烈な香り漂う旧市街では、土産物屋や屋台の客引きたちが盛んに呼び声を放ち続ける。
あふれんばかりの活気が訪れる旅人を圧倒する。
人々はモロッコの他のどの都市の人たちよりも元気がいい。
その反面、観光客たちをカモにしようと、てぐすね引いて待ち構える輩も腐るほどいる。
良い意味でも悪い意味でもモロッコのモロッコらしさが凝縮されたような町、それがマラケシュだ。

Marrakech2 そのマラケシュのマラケシュたる面を一番強く感じることができるのがジャマ・エル・フナ広場。
通称フナ広場、地元の人たちは単にラ・プラサ(広場)と呼ばれている場所だ。
旧市の一角にあるこの広大な広場では、そこに集まる群集たちの前で、常時様々な見世物が繰り広げらている。
ベルベル人の踊り子、インド人もびっくりの蛇使い、猿回しの親父、独特の帽子と赤い衣装に身を包む水売りの爺さん、ヘンナ描きやタロット占いのおばちゃんたち・・・。
夕暮れ時には巨大な屋台街も設営され、夜が耽るにつれて広場はいっそう賑わいを増す。
屋台物をつまみ歩きながら、広場のそこかしこでできている人の輪を一つ一つ覗きながら巡る。
「フナの輪巡り」というこの夜歩きこそが、マラケシュを楽しむ上での醍醐味だといえよう。

ワルザザートからのバスで出会った大学院生のコズエちゃんと一緒に、夜の屋台巡りに出向いてみた。
それぞれの屋台は白い幕で区切られ、一つ一つに番号がついた屋台が整然と並んでいる。
まるでモロッコ料理の見本市とでもいった感じに、実に様々な料理が並ぶ。
屋台の奥から沸き漂う白い湯気、その中で品定めしながら歩く観光客の群れ。
彼らの腕を露骨に引っ張る客取り合戦がそこかしこで繰り広げられている。
客引きたちは、客に合わせて何ヶ国語もの言葉をころころ切り替えている。
モロッコ人のお得意芸だ。
そのやりとりは傍から見ているだけでも面白いが、実際に自分たちに群がり寄る客引きたち相手に、おちょくったりおちょくられたりするのがとても楽しい。

「日本人デスカー?ヨーコソー!チョット待ッテクダサイネー」
ほいほい、何を売ってるのかい?
「サカナー、ケバブー、クスクスー、ココデ食ベルー?」
いろいろあるから何にするか迷いどころだなぁ・・・。
「ヤギー、ヒツジー、アタマー」
アタマって羊の脳みそのことっぽいな。俺の大好物じゃーん♪
「アシー、カンゾー、シンゾー、オダユージー」
ん?ちょっと待て。織田裕二だぁ?
「オヤジ、その織田裕二の値段はいくらだ? 今日の晩飯はそれにしてやってもいいぞ」
「ナカター、スズキー、ホンダー、トヨター」
「何だ、織田裕二はないのかよ。ならいらねーや、またねー」
「マタ後デー、ココハ16番、アナタヤクソク、ヨロシクネー」

Marrakech3 こんな調子でお互いからかい合いながら屋台の中を練り歩く。
肝心の屋台物のお味の方はどうかといえば、どこもそれなりに悪くはない。
悪くはないんだけれど、どれもそこそこいいお値段。
どの屋台でも値段は品ごとにちゃんと表示されているものの、外国人観光客が相手だとほんのちょっとしか皿に盛らないような性質の悪い屋台もある。
すぐ近くにある市場の中の安食堂街の方が、同じ値段でずっと腹一杯になるため、5日間の滞在中俺はほとんどそっちで食べていた。
広場の屋台物でのオススメはハリラと呼ばれるスープ、数種類の香辛料を混ぜ入れてある特殊なお茶、それと昼間から売っている新鮮オレンジジュースくらいかなぁ。
ゲテ系ではエスカルゴも売っているけど、見た目がナメクジそっくりでグロすぎるし、味はくせが強くて日本人好みじゃない。
期待していた羊の脳みそも、ここのはイマイチの味だった。
あとは日本のカルメラ焼きに似た小さなお菓子(名前はないそうだ)。
屋台じゃなくておばちゃんたちが持ち歩いて売っているんだけれど、柔らかい食感で甘いココナツ味がする。
昔トルコでよく食べていた俺の好物だが、モロッコではここで初めて見かけた。
1個1ディルハムとお安い物なので、観光の合間の腹ごなしに丁度いい。

マラケシュでは他にも宮殿や博物館や郊外の庭園などを見学。
その庭園の位置が「歩き方」の地図でとんでもない場所に表示されていたため、またもや大きく遠回りしてしまったが、ワルザザートで「歩き方」の郊外表記はあてにならないと思い知らされていたばかり。
我ながら学習しないやつだと思うのであえて文句をいうつもりはない。
ただ、後で知ったことだが、「ロンプラ」のモロッコ編でも全く同じように間違えて表示されていた。
ひょっとして「ロンプラ」から情報パクってる可能性あり・・・??
ま、別にいいけどねー。