フェズ4 - 超豪華宮殿での晩餐ベリーダンス付き | 旅人日記

フェズ4 - 超豪華宮殿での晩餐ベリーダンス付き

Fez4-2 本日も引き続きカヨコさんの観光のお供をさせていただくことに。
タカハシさんは腹を壊して体調が思わしくないため今日は一日宿で休養。
同じものを食べていた他の連中が腹を壊しているにもかかわらず俺だけ平気だったりすることは今までにもちょくちょくあったのだが、考えてみたら今回の旅ではほとんど全く下痢にはかかっていないような気がする。
病気にしても気温差の激しい場所を移動した時や湯冷めした時などに軽い風邪を引く程度だ。
知らず知らずの内に長期旅行者仕様の便利な身体になっているのだろうか。

今日の観光はとりあえずフェズの町を見下ろすことができる丘の上まで歩いていくことに。
城壁の外から回り込んでいけば容易に辿り着ける場所なのだが、それではちと面白くないのでメディナの迷宮内を突っ切って目的の場所を目指すことにした。

メディナ内からその丘の麓に辿り着くためには、まず迷宮の北の出口の一つであるギッサ門を目指すことになる。
実は俺も数日前に一度挑戦してはいたのだが、迷いまくってギッサ門まで辿り着くことができずに全然違う門から外に出てしまい、目的の丘がどっちの方角なのか定かでない上に自分の現在地すら地図上のどこになるのかすらわからなくなり、そうこうしている内に雨も振り出して来たこともあって止むを得ず撤退していたのだ。
メディナ内に数ある見所への複雑な道と比べても難易度Aのルートといえよう。

ま、難易度が高いといっても、実際には要所要所で地元の人に尋ねながら行けば全く迷うことなく辿り着けることができるであろう。
だが、それではやはり面白みに欠けるのだ。
あっちへこっちへと迷いながらようやく目的地まで辿り着く、それこそがこのフェズの大迷宮の醍醐味なんじゃないかと思う。
昨日は俺が先導して案内してしまったためにその楽しさを奪ってしまった部分があったかもしれないと思い、今日はカヨコさんの思うままに先に進んでもらい、俺は基本的に後から着いて行くだけにした。

メディナ内の主要道から脇道に入って北にあるはずの門を目指す。
この初っ端の入り口で間違っていたりするとまず辿り着けないのであるが、ここだけはガイドブックの地図と照らし合わせてみても間違いではなさそうだ。
問題はその先。
人の流れが比較的の多い方へと考えなしに進んでいくと前回の俺の二の舞になってしまう。
その最初の方の間違えやすい分岐点だけは伝え、後はひたすら彼女の思う方角へと歩いてもらう。
そこから先は俺もまだ未踏の地区。
細い路地裏を右に曲がり左に折れ、ガキどもが遊ぶ坂を登ったり降りたりしながら、周囲の雰囲気は徐々に城壁の外へと通じている気配になってきた。
そして最終的には全く迷うことなく最短距離で無事ギッサ門まで到達。

こう書くと「単にお前が方向音痴なだけで、ホントはそんなに難しくないんじゃないか」と思う人もいるかもしれないけれど、実際にあの地区を歩いたことがある人ならわかってもらえると思う。
カヨコさんは山登りも趣味なだけあって、その方向感覚は相当なものなのだ。
とあるネットゲーム内にて見事なまでの方向音痴っぷりをさらけ出していたことのある俺も、現実世界の町歩きでは達人並みの案内振りをすることで一部の旅人の間では有名なのだ。
初めての土地でも訳知り顔でみんなを先導するものだから、ぶっちゃけ迷っていたとしてもたぶん後ろの人たち気づかれていなかったっちゅうこともあったりするのだが・・・^^;
いや、正直な話、自慢じゃないけど、自分で思っているだけなのかもしれないけれど、俺の方向感覚もなかなかのものなのだ。
その証拠に別方向へ向かうバスに乗ってしまったこともないし(電車では一度だけやってしまった^^;)、間違って見当違いの国に迷い込んでしまったようなことも一度もない。
それは方向感覚以前の問題だろとか、くだらん言い訳はどうでもいいから話を先に進めんかいという声が聞こえる気がするので、とりあえず丘の上へと進んで行くとしましょうかね。

ギッサ門から出てしまえば、そこからは丘が見えるので迷いようがなく上まで登ることができる。
丘は全体が古びた墓地になっていて、その合間に羊毛や鞣された羊革を天日に干す作業をしている人たちがちらほら。
イスラム教の墓地って、毎回思うんだけれど、他の宗教のものと比べると簡素な作りで全体的にからっとしている。
仏教やキリスト教の墓地でしばしば感じる陰気な雰囲気がまるで感じられない。
この丘も、陽気に作業を続ける大人たちや無邪気に遊ぶ子供達のお陰か、ひたすらのどかな雰囲気なのだ。

丘の上には崩れかけた土の城壁が残っている。
その一部に開いた小さな穴を抜けると、そこにはフェズの町全体が見下ろせる格好の場所が。
そこで遊んでいた子供たちがすぐさま寄ってきて俺らを取り囲み、はにかみながら「シャッキシェン?(ジャッキーチェンのことらしい)」とか「ジャポン?カラテ?」とか話しかけてくる。
カヨコさんが写真を撮っている間、俺は彼女にもらったアラビア語の会話帳を使いながらガキどもと一遊び。
この「旅の指差し会話帳」、使ってみるのは初めてだったのだが、これがまためちゃくちゃよく出来ていて、特にこういうガキどもと戯れるには最高の代物だ。
挿絵付きのアラビア文字を見せながら指差すだけで、みんな面白そうに覗き込みながらそこに載っている例文や単語を口を揃えて発音してくれる。
日本人の耳には聞き取りにくくて、発音もかなり難しいものが多いアラビア語だけど、こうやって練習できるのなら習得するのもそう難しくはないかもしれない。
うーん、いいものを頂いてしまったなぁ^^

その後はちょっと離れた先の別の丘にも登り、近くの有名な高級ホテルの脇を抜けて、高台のベンチで一休みしたりしながら、町へと戻る。
宿へ戻るとタカハシさんは朝飲んでいた正露丸が効いたのか復活している模様。
彼も誘って一緒に軽く腹ごなしにまた外に出てみたが、年末休みなのか閉店している飯屋が多い。
しかたなくテキトーな喫茶店で茶菓子をつまみながらのカフェオレで、道行く人々を眺めながらの午後を過ごす。
ここモロッコでは観光にあくせくするばかりではなく、地元の人と同じようにカフワとよばれる茶店で一日中何もせずにぼーっと過ごすのも楽しい時間の過ごし方なのである。
ある意味一番モロッコらしい状景を楽しめるんじゃないかな。

カヨコさんはとても話し好き、というより聞き上手な女性なので、こちらもつられて旅の話をじゃんじゃんかましていたのだが、短期系の旅行者で俺ら普段しているようなマニアックな旅の話に自然についてこれる人も珍しい。
何しろヨーロッパはほとんど行っていないにもかかわらず、すでに50カ国以上は周っているほどの相当な旅の達人なのだ。
南米のパタゴニアやギアナ高地などは3人とも経験しているだけあって、どんな場所かを説明しあう必要もなく「あそこは凄かったよね~」「どこそこは行きました?」「俺らの時はこうこうこうだったんですよ~」みたいな調子でぽんぽん会話に花が咲く。
旅の話というものは、旅好きな人ならともかく、そうでない日本の友人知人たちにはなかなかしづらいものである。
俺はどちらかというと口下手な方なので、細かい説明をしなくてもわかってくれる相手というのはとても話しやすい。
気心のしれた昔の旅仲間に再会できたような気分で、今までの旅の経緯や昔の旅での体験談などを、もう昨日から引き続いてずっと話し続けていた。

夜はまた、彼女が行ってみたいというレストランにお供させていただくことに。
俺らの宿から歩いて行ける場所なのだが、ガイドブックに「メディナ内のすてきな『隠れ家』」と紹介されているだけあって、薄暗い裏路地をぐんぐん進んだ先のひっそりとした場所に入口があった。
表通りから裏路地へ入る場所にも特に案内板があるわけでもなく、俺らが探していると「店の人間だ」という若い男が店まで道案内をしてくれたものの、何もない暗い道をどんどんと進んで行くので、途中から変な場所に連れて行かれるんじゃないかと少々不安になったほどだ。

店の名前は「アル・ファシア」。
「パレ・ジャメイ」という、モコッコ国内でも指折りの格式高い高級ホテル(もちろん五つ星)の中にも同名のレストランがあるらしいが、ここはその姉妹店とのこと。
カヨコさんは本当はそっちのホテルに泊まりたかったらしいのだが、残念ながら満室で予約が取れなかったらしいのだ。
夜9時からはベリーダンスのショーがあるらしく、その少し前に入店。

Fez4-1 ウエイターに案内されて店に入ると、すぐ外の裏寂れた雰囲気とは打って変わって、豪華絢爛の別世界が。
これじゃまるでどこかの宮殿じゃないか・・・。
高い天井の広々とした空間、壁や広間を取り囲む列柱はイスラムの細かな装飾で一面びっしりと覆われている。
アルハンブラ宮殿もびっくりの凄い部屋だ。
これがスペイン辺りにあったらレストランなどではなく、博物館になって観光客でごったがえしているか、そうでなくてもパラドールとして高級ホテルに使われていそうなくらいのところだ。
後で聞いたら、200年前にはとあるパシャ(貴族)の邸宅だった建物だそうな。
いやはや、こんな所にこんな建物が隠れていたなんて・・・こいつは隠れ家どころか隠れ豪邸じゃん。

華麗な内装の割には照明はやや抑え目にしてある。
そのせいか、店内は全体的に落ち着いたたたずまい。
中央の広場を囲むようにして、高さの低い丸テーブルが配置され、一人掛けのソファー式の椅子に腰掛ける。
予約はしていなかったのだけれど、幸いまだ客が少なかったようで、ショーが行われるであろう中央の広場やその奥のモロッコ伝統音楽を演奏している場所を真正面に見据えることのできる、なかなかいい席につくことができた。

んで、真っ白な服に赤い帽子を被ったウエイターがメニューを持って来る。
この店には単品はないようで全てセットメニューになっていて、そのそれぞれにどんな物が出てくるかフランス語と英語とスペイン語で説明書きがしてあるんだけど・・・。


お値段全部三桁越えてますがな・・・^^;


ちなみに俺らの普段の晩飯といえば、安食堂で惣菜盛り合わせにスープを付けて10~15ディルハム、ちょっと贅沢タジンを頼んでもいいとこ25ディルハムといったところ。
このフルコースのメニューにワインも付けたら3人分でいったいいくらになるものやら・・・。
メディナを案内してくれたガイド料よ、と気前よく奢ってもらって、おぉそれはそれはご馳走様です♪ と気軽に構えてしまっていいのか? 別段大した働きもしていない私めごときがこんな場所でこんな凄そう料理を振舞っていただけるなんて、ホントにそれでよろしいのでございましょうか・・・?

俺がメニューを見ながら目を丸くして固まっていたら、陽気でよく喋るウエイターが自分で勝手に値切り始め、「二人分の料金で三人前ご用意しましょう。もちろんお代わりはお好きなだけおっしゃってください。何の問題もございません。前菜にはスープとサラダのどちらがよろしいですか?」と、本当はもっとくだけた英語だったけれど、その時は店内の雰囲気のせいか不思議なほど上品に聞こえたりした。

出された前菜のサラダを見て、これまたびっくり。
かんなり大きな皿に生野菜や炒めた野菜や初めて見る惣菜やオリーブなどが盛りだくさん。
数人分用の盛り合わせサラダといった量で、もうこれだけでもパンと一緒に食べてお腹一杯になりそうだ。
スープの方も、モロッコ定番のハリラというトマト風味のスープなのだが、安食堂で2ディルハムで出てくるものとは上品さがまるで違う。
これじゃメインが食べられなくなるかも、などといいながらも結局は完食。

メインは鶏のタジン
ちなみに「タジン」というのは料理名というより、本来はその料理を入れる厚い陶製の皿とそれに被せる三角帽子のような蓋のセットのことを指す言葉のようだ。
その陶器に入れて煮込んだ料理はすべて「タジン」と呼ばれるが、日本語の「鍋」に似たような単語だと思えばわかりやすいだろうか。

中に入れる具も様々で、店や地方によって味付けにかなり差がある。
たいていは鶏肉や牛肉や羊肉などを各種野菜と一緒に弱火でじっくりゆっくり煮込んであって、煮込み終えたら皿ごとそのままテーブルに運んでくれる。
ケフタ(ミートボール)や魚のタジンなんかだと、野菜はあまり使わずにトマトスープを使って煮込んである場合が多い。
味付けはサフランやパプリカやクミンなどの様々な香辛料が使われていて、煮込み加減と同様に香辛料の調合具合も料理人の腕の見せ所らしい。

さてさて、ここのタジンはどんなものかい、と思っていたら、いきなりどでかいタジンの容器が運ばれてきたのにまたまたびっくり。
普段俺らが食べている一人前用の容器の何倍もの大きさだ。
ウエイターがおもむろに蓋を開けると中から白い湯気がもわっと立ちあがる。
中身を各自の皿に取り分けてもらい、いざ賞味。

・・・・・むはっ、バリ旨!!!!!


甘さの程よく効いた絶妙の味付け。
やわらかくふっくら煮込まれた鶏肉がまったりと旨みの効いたスープをたっぷり含んで、あちち、この香ばしさがなんともまた、はぐはぐ、一緒に煮込んであるオリーブもいけますね~、ふはふは、上に乗っている黄色いのは蜜柑の皮かな、おぉ、このスープはパンに付けてもめちゃくちゃ合うじゃないですか♪
てな感じで、もうひたすら美味しく頂いちゃいました^^

食事の間はずっとアンダルース音楽と呼ばれるアラブ版のオーケストラのようなものの生演奏が流れていた。
ダルブーカというバイオリンやダルブーカという太鼓、ベンディールというタンバリン、それにノロッカスという平べったい鉄アレイのような形の銅製打楽器などを使って奏でる演奏で、モロッコの伝統音楽だ。
こんなものを生で聴くことができる機会も、俺らの身分ではそうそうないだろう。

Fez4-3 食後に果物が出てきた頃、演奏が一時中断されて、いよいよベリーダンスが始まりそうな雰囲気になってきた。
いよっ、待ってました!とばかりに立ち上がってカメラを構えては見たものの、出てきたのはちょっと太目のおばちゃん。
しかもベリーダンスと言う割には、腹すらだしていないだぶだぶの服に日笠のような帽子を被っている。
そんな阿波踊りでも踊りそうな格好でベリーダンス踊られてもちょっとなぁ・・・^^;
しばらくしたら、ちゃんと俺らが想像していたような色っぽいベリーダンスの衣装に着替えて出てきたけれど、段つきの腹でシャンシャン踊られてもなんだかなぁ・・・^^;
さらに今度は若いねーちゃんが代わりに出てきて、お、これならいけるんじゃないか、とちょっと期待したけれど、このねーちゃんの方はおばちゃんに比べると踊りが素人っぽすぎる感じがする。
中南米のサルサやアルゼンチンのタンゴを見てきた俺は踊りにはちょっとうるさいよー。
自分自身はステップ一つ踏めやしないけどね^^;

ま、何にせよ、こんな優雅な場所で豪勢なお食事にベリーダンスまで見れてしまったのだ。
多少はおごってもらえるかもと期待していたのは確かだけれど、正直ここまで豪快にご馳走になってしまうとは考えてもいなかった。
一足遅れでやってきたサンタのようなカヨコさんに感謝感謝である。

その後、一旦俺らの宿に戻り、屋上から夜景を眺めたりした後に彼女と別れる。
年越しも一緒に過ごせたらよかったのだが、日本へ戻る日程上、彼女は明日の飛行機でカサブランカに戻らなければならないのだ。
別れ際には「年が明けたら開けてね」と手紙をいただいた。
なんとなく悪い予感がしていたのだけれど、約束通り年明けにその手紙を開けてみたら、手紙と一緒にやっぱりお餞別が入っておりました。

たぶん、俺らの貧乏暮らしを垣間見て思わず援助してくれたのだと思う。
でも、あんなにもご馳走になってしまった上に、こんなものまで頂いてしまって・・・あまりにも勿体なさ過ぎて使うに使えないなぁこれは^^;
とりあえずお守り代わりとして大事に持ち歩かせていただきますね^^

カヨコさん、フェズで一緒に過ごせたこの3日間、こちらも本当に楽しかったですよ。
俺なんかじゃ一生味わうことのないようなご馳走もたらふく食べさせてもらって・・・。
本当に感謝しております^^
いつかまた世界のどこかで、ぶらっと出会えたら楽しいでしょうねぇ。
その時は、俺の方からおごらせてくださいな。
俺の懐じゃぁひょっとしたら屋台物になっちゃうかもしれませんが、その町で一番美味い屋台にご案内する自信はありまっせー!^^