フェズ - 世界最大の巨大迷宮都市 | 旅人日記

フェズ - 世界最大の巨大迷宮都市

Fez1 お気に入りのシャウエンの町でしばらくぼーっとりしていたのだけれど、のんびりしてばかりもいられないので意を決してフェズへと駒をすすめることに。

フェズはモロッコ最初のイスラム王朝イドリス朝の首都として9世紀に建設された町で、日本でいえば京都や奈良に相当する古都だ。
フェズのメディナ(旧市街)は世界一の迷路の町として有名で、町の人口32万人の約半分がそのメディナの中で暮らしているという。
日本のちょっとした地方都市のような規模の大きさの町で、その全部が迷路になっているというわけだ。
なにしろ9400本もの路地が入り組む巨大迷路で、その中には350のモスクが存在しているらしいのだ。
ちょっと想像がつきにくい所だが、とにかく凄い町には違いなかろう。
以前から憧れていた場所でもあり、着く前からかなりわくわくしていた。

Fez2 シャウエンからバスで5時間の移動でフェズに着き、メディナの入口にあるカスカーデという宿に投宿。
二人部屋一人60ディルハムと、モロッコの安宿基準としてはやや高めの宿であったが、場所が便利なのと屋上からメディナを見下ろせる景色が気に入ったのでしばらくこの宿に滞在することにした。
昨日到着した時はすでに暗くなりつつあったので、今日から本格的に迷宮探索を開始である。

着いた時にも思ったけれど、想像以上に大きな町だ。
どでかい立派な城壁にぐるっと囲まれたメディナ。
今までに見た迷路の町とは規模がまるで違う。
こいつは楽しく迷って気ままに町歩きどころの話ではない。
下手したらマジで宿まで戻ってこれなくなるくらいの巨大迷路だ。

その大きさもさることながら、1000年以上前に作られた都市が現在でもさほど変わらぬ姿で生きて機能しているというのが凄い。
雰囲気も中世さながらの香りを十分に漂わせている。
高い建物の間の挟まれた薄暗い道の中、所狭しと並ぶ店々、鼻を突く香辛料の香り、活気あふれる市場、人ごみを掻き分けながら荷を運ぶロバ、異国情緒満点のアラビア音楽、時折響くアザーン(祈り)の声音・・・
うーん、いいねぇ。大好きだよ、こういう雰囲気。
ジュラーバに身を纏い、人の流れに身をまかせながら、足の向くまま気の向くままにぷらぷらと散策。
時空を越えて中世アラビアの世界に迷い込んだかのような錯覚さえしてくる。
なんとも心地よい気分である。

主要な通りでは、野菜を売る地区、肉屋街、魚市場、香辛料市場、日用品や服屋が並ぶ地区、安食堂街など、それぞれのスーク(市場)に分かれてはいるものの、明確な境界はなく全てが繋がっている感じ。
メディナ全体が一大スークといっても過言ではないほどだ。

基点となる広場や主要通りをある程度把握してから、いよいよ裏路地に挑戦。
こっちは人通りが少なくて、建物のほとんどは居住区となっているようだ。
細い道は先に進むにつれてどんどん細くなっていく。
右に折れ、左に曲がり、身体一つ通すのがやっとのトンネルような場所を潜り抜け、いくつもの行き止まりに突き当たったりしているうちに、あっという間に方向感覚を失う。
ようやく人通りの多い通りに出たと思っても、そこが一度通ったことのある場所なのかどうかさっぱり思い出せない。
いったいここはどこなんだ状態。
テキトーな方向に向かっててくてく歩いていたら、やっと見覚えのある場所に出た。
よっしゃ、今度はこっちの方角に挑戦だ。
てな感じで裏路地探索を繰り返しているうちにあっという間に時間が過ぎていく。
うーん、楽しすぎるぞ、フェズ。

Fez3 迷路の中に点在するはずの見所にはほとんど辿り着けなかったけれど、その内の「なめし革染色職人の作業所」にはたまたま通りがかることができた。
メディナの一角にあるタンネリ」と呼ばれる場所で、フェズ名産のなめし革を染色する作業場だ。
周囲を建物に囲まれた地面に染色のための桶が円形にくりぬかれている。
桶の中には染付け用の色鮮やかな染料が満たされていて、職人達がなめされた山羊や羊や駱駝の皮をひたしたり、染め上がったものを壁にかけて乾かしたりする作業が行われている。
チップを渡して近くの土産物屋の上から眺めさせてもらったけれど、なかなか見ごたえのある場所であった。

夜は宿の近くの食堂で定番モロッコ料理の一つであるタジンを賞味。
香辛料を効かせて野菜や肉などをじっくり煮込んだ物で、とっても美味。
モロッコは食費が安いうえに、何を食べてもハズレがないから嬉しい。
重ね重ね、いい国だねぇモロッコは♪