南米脱出! | 旅人日記

南米脱出!

Caracas 朝9時より行動開始。
宿から歩いていける範囲で2~3軒周ってみるが、マドリッドまで片道で685USドル、往復で885USドルとやや高めである。
闇レートで両替したボリバーレス払いだとそれぞれ565USドル・730USドルくらいになるのだが、それでもちと高い。
しかも片道ではなかなか売ってくれない。
スペインの居住者以外には片道航空券を売ってはいけない決まりになっているのだとか。
もしそれで買っても、スペインに飛ぶ前にベネズエラ側で追い返されるとのことなのだ。

なんともバカげた話である。
同じようなことはパナマ⇔コロンビア間とか、アメリカやイギリス入国時などでちょくちょく耳にする。
片道航空券で飛んだのはいいけど、その先の国で入国拒否されてしまうという話だ。
その先から第三国へ出国する航空券があれば問題ないのだが、そうでなければその場で航空券を買わされたり、最悪の場合は入国できずに本当に追い返されたりするらしい。実際にそういう目に遭った旅行者に会ったこともある。
キャンセル可能な航空券をあらかじめ購入しておき、入国を果たしてからキャンセルするという手もあるのだが、一々そんな面倒なことやってられっか。
俺はこういう、バックパッカーの身の上をまるで考えていない制度が大嫌いである。

旅行代理店巡りを続ける。
学割が利く代理店が一軒あるはずなのだが、住所を頼りに探してみても一向に見つからない。
道行く人に尋ねまくるものも、みな知らないようだ。
しかたないので、とりあえず地下鉄で数駅離れた地区にある日本人経営の旅行代理店に行ってみる。
そこでは片道1281500ボリバーレスで売ってくれるとのこと。
闇レート計算で493USドルだ。悪くない。
「ただし、追い返されても責任は取らないからねー」とのお話。
よかよか。その辺りは自分でなんとかしよう。こっちも伊達に長いことパッカーやってるわけじゃない。口八丁手八丁ですり抜けるのはお手のものなのだ。

「明後日かそれか・・・今日の午後6時15分出発のがあるわよ」
へ?今夜発?間に合うのかそれって??
時計を見ると午前11時半。なんとかなりそうだ・・・。
どうせ明日には宿を追い出される身なのだ。別宿を探すのも面倒だし、この際だから今夜の便に乗ってしまうとしよう。
ある意味渡りに船である。こういった成り行き任せは大好きなのだ。

出発を決めたのはいいが、それからが大忙しであった。
宿に戻って、シャワーを浴びて、荷物をまとめて、チェックアウトして、一旦宿に荷物を預けて、闇両替商に行って大金を両替して、また代理店に戻って、航空券を購入。この時点で午後2時。
南米の最後にネットも少々しておきたいところだったが、どうやら余裕がなさそうだ。
さらに本日初の食事を取って、食料を買って、タバコも買いだめして、タバコ屋の娘の熱い眼差しに後ろ髪引かれながらもチャオチャオして、余ったボリバーレスを再両替して、宿に戻って荷物を取り出して、地下鉄と乗合いタクシーを乗り継いで、空港に着いたのは午後4時。なんとか間に合ったかな。

さてさて、問題はここからである。
チェックインカウンターに並ぶ列の入口で当然のように止められる。
女性係員が二人、代わる代わるに俺のパスポートと航空券を見ながら、
「この人、片道券よ」
「どうしましょう。外国人は確か往復じゃないと乗せられない規則だったわよね・・・」
などとささやきあう。
その間俺は聞こえない振りをしてニコニコ顔で静かに待機。
「失礼ですが、スペインから日本への航空券はお持ちでしょうか?」
うーん、やはり来たかー。ちと融通が利かなさそうな雰囲気だ。やばいな。
ワタシニホンジンアルネスペインゴサッパリヨン作戦でしのぐか。
いや、それだと上手くいく保証がない上に時間ばかりかかって手間取りそうだ。
ここは嘘八百&お涙頂戴作戦で行くとしよう。

「いえ、スペインからはポルトガルに行くんですよ。日本へはポルトガルから飛ぶ予定でして。スペインからポルトガルにはバスか列車で行くつもりです。そのチケットはスペインじゃなきゃ買えませんからね。当然持ってませんよー」
何の問題もなかろー、と純粋無垢な笑顔を投げかける。
「ポルトガルからのチケットはお持ちですか?」
やっぱりそう来るか。
「え?どうしてですか?ネットで買ったから手元にはないけれど・・・」
さーどう来る?
「スペインもしくは隣国からの出国券がないと搭乗できない規則なのです、お客様。ご購入の航空券はどちらの航空会社のものでしょうか?」
うーん、そうやすやすと突破させてはくれないか。間髪入れずテキトーに浮かんだ航空会社の名前をいう。
「ブリティッシュエアーです。リスボンからロンドン経由で東京へ行く便です」
「困ったわね・・・ブリティッシュエアーですって。この空港にはオフィスがないわ」
げ。あったら調べるつもりだったのか。危ねー危ねー。

ここらでこっちもちょっと攻めにまわってみるか。
「理解できません。どうしてそんなものが必要なのでしょう? クレジットカードもあるのです。先々で航空券が必要になればいつでも購入できるのです。日本人はスペイン入国にビザは必要ないですし、前回行った時も全く問題なかったのですよ」と、やや変化球気味にジャブ。
「そういう規則なのです。私たちもおかしいとは思うのですが・・・」
よし、多少は利いているかな・・・? 駄目押しにもういっちょうだ。
「インターネットに繋がるコンピューターはないのですか? あれば購入の証明をすることができるのですが」
ここにはそんなものなかろー、と高をくくった攻めである。なければ証明できないのはこっちの責任じゃなくなるというわけだ。
ま、見た感じ、コンピューターはチェックインカウンターにしか設置されていなさそうだし、それはさすがに一般人に触らせようとはしないだろう。
ちなみに、実際に予約してあるかのようなパソコンの画面をテキトーにでっちあげてプリントアウトしておけば、恐らくそれで問題なく通過することができたであろう。だが、今回はそんなものを用意する時間的余裕がまったくなかったのだ。

「2階にインターネットカフェがあります。そちらでお見せいただけますか?」
うぎゃ。あるのか。裏目ったなーこりゃ。こうなったらなりふりかまわず嘘八百を並び立てだ。
「いえ、インターネットカフェでは無理なのです。Webサイト上で購入したのではないため、私個人のIPアドレスに接続したメールソフトでないと購入した際のメールが開けないのです。ブラジルで購入した時は問題なかったものの、ベネズエラでは何度も試したのですが、どうしても私のサーバーのIPアドレスにアクセスできないのです。この国ではPOP3のプロトコル使用に何か制限でもあるのでしょうか?」
自分でもよくわからない発言をかましているものの、聞いている方はもっとわけがわかるまい。
ほーら、オネーチャンたちも困った顔してるぞー(笑)。

この辺りで彼女らの上司らしき男が登場。
英語が話せるとのことで、事情を英語で一気にまくしたてる。
「こんなことになるなんて全く想像もしていませんでした。本当に飛行機に乗れないのでしょうか?どうしても無理なんでしょうか??」
泣き落とし作戦に突入である。眉毛八の字にして涙潤々。自分でいうのもなんだがアカデミー賞ものの好演技だ。
それまで説明を無表情で聞いていたその上司、俺の泣きそうな目を見て、フッと微笑んだ。
「仕方ありませんね。大丈夫ですよ、ご心配なく」そういって航空券にサインをしてくれた。
「本当に?乗れるんですか?ありがとう!!」
何度もお礼を述べてチェックインカウンターへ。
ふー、これでなんとか第一関門突破。一時はどうなることかと本気で冷や冷やしたよ・・・。

その後は特に問題なく通過。無事飛行機に乗ることができた。
ちなみにサンタバーバラ航空という、あまり聞き慣れない航空会社。
ベネズエラの航空会社だけれど、社主はスペイン人で、でも使っている飛行機はなぜかアイスランド航空のもの、という何だかよくわからない飛行機であった。

明日のスペイン入国では第二関門があるのだろうか?
まーイギリスやアメリカほど厳しくはあるまい。何とかなるさ。
最悪ベネズエラに追い返されてしまったら・・・そん時ゃせっかくだから南米二周目に突入しちまおうかな(笑)