ロライマの奇跡 ~5日目~ | 旅人日記

ロライマの奇跡 ~5日目~

Roraima5-1 朝起きると、やはり靴下は乾いていなかった。それどころか干した時より濡れている気がする。
まあいい。今日は洞窟内にテントも荷物も置いたままで、ガイアナ側にある湖まで空身で歩く日なのだ。雨さえ降らなければ明日までには乾くだろう。

天気は曇り。霧はないので昨日よりだいぶ歩きやすい。
けれども、ところどころにある湿地では、気をつけていないとずぶずぶと泥沼にはまることに。
ホセが行く先々に飛び石を作りながら先導し、俺らはその上を跳びながら進む。

しばらくしてカコ川という小川に出た。
テプイの外壁で滝をなし、ガイアナ国内を通って大西洋まで続いている川の源流だそうな。川沿いに北上しながら歩く。
ホセ曰く、この川ではダイヤモンドが採れるとのこと。
「何っ!ダイヤモンドだって?」
3人の目がキラリと光り、一斉に川底の砂を掬いはじめる。
ホセが小さなダイヤの原石を掬い上げて見せてくれた。砂粒並みの小ささだ。
違う。俺らが欲しいのはもっとこう、とにかくデカイやつだ、わかるだろう?
砂が沈み溜まっていて、ありそうな雰囲気の場所を見つける度に底の砂を掬い上げ、手のひらの上で水の流れにさらしながら比重の重いダイヤを見つけ出そうと試みるが、残念ながらその後はホセでも見つけることができなかった。

Roraima5-2 その後、赤茶色の潅木が生い茂る谷間を抜け、広々として歩きやすい岩盤の上を通り、またもやいつ越えたかわからない国境を越えてガイアナ側へと進んでいく。

洞窟宿から数えて3時間後、目的の湖に到着。
広い岩盤に直径50メートルくらい穴が開いていて、その底に黄褐色の水を湛えた小さな湖がある。
想像していたほど見ごたえのある湖ではないが、とりあえずロライマの奥までやってきたのだという達成感は味わえた。
穴の縁に座りながらしばし休憩。

近くにある、8年前に墜落したヘリコプターを見に行こうとホセがいう。
行ってみると、そこには機体の残骸のほんの一部だけがゴミ山のような形で残っていた。
ホセはその一部をもぎりとり、自分のリュックに括りつけた。
こうして立ち寄る度に下界に運んで行き、みなで少しずつきれいにしていくのだそうだ。
なるほどね、感心感心。

カコ川まで戻り、ホセが昼飯を作る間に、俺らは下流の崖を見に行ったり、滝壺で水浴びしたりして遊んでいた。
昼飯後にゆるゆると来た道を洞窟宿へと引き返す。
帰りがけに、昨日のブラジル側の崖の方面を見上げると、どうやら多少の晴れ間がありそうな気配。もしかしたら今ならロライミーニャも見えるかもしれない。
ホセを先に宿に戻し、俺らだけで行ってみることに。

Roraima5-3 この辺りにも落ちている水晶を拾い歩きながら進み、崖の先に辿り着く。
前面の雲はスカッと晴れていて、下界の大地には見事に大ジャングルが広がっている。ロライミーニャのテプイもはっきり見ることができた。
遥か地平線のかなたには、遠くアマゾン河すらぼんやり見える・・・というのはさすがにウソだが、ホントに見えそうなくらい遠くまで果てしなく緑のジャングルが続いていたのだ。

この辺りの日程はいわばオマケのようなもので、もう十分見るべきものは見たし、別に雨が降ろうが雲に遮られようがかまわない気分でいたのだが、なんとなく俺らの行く先々で雲が避けていくような感じがしてきた。これだけ幸運が続くと後が怖い気すらしてくる・・・