ロライマの奇跡 ~4日目~ | 旅人日記

ロライマの奇跡 ~4日目~

Roraima4-2 この日の天気は「雲」。「曇り」ではなく、もう完全に「雲」の中。
5メートルくらい先までしか視界が届かない中、荷物を担いでの移動日である。
岩でできた自然の迷宮や、様々な形をした奇岩の近くを通るものの、この天候ではあまりいい画にはならない。

だが、これが本来あるべき姿のロライマ山頂なのだろう。いままでの天候が良すぎたのだ。
道なき道を岩の上を飛び越えながら少しずつ進む。
ホセもよく迷わずに進めるものだ。この道20年の本領発揮といったところか。見直したぞ。

途中「クリスタルの谷」と呼ばれる地点を通過。
その名の通り、地面のいたるところに水晶が散らばっている。記念に形のいいものをいくつか拾っていくことに。
「下山時に見つかったら君らは100USドルの罰金で、俺は3ヶ月間ガイドの仕事が出来なくなる。だから・・・絶対誰にもいわないでくれよ(笑)」とホセは片目をつぶる。
ウンウン、そういう頭のやわらかい人間、俺は大好きだ。
約束しよう。絶対誰にも話さないよ。日記には書くけどねー。
それにしてもこんな場所に水晶が落ちているなんて、ちとびっくり。

Roraima4-3さらに進んで、線は引いてないけど国境を越えてブラジル側にある本日の宿に到着。
昨日と同じく岩山の中の洞窟宿だが、こっちはかなり広い。
中に入るとホセがいう。
「ようこそホテル・コアーティへ!」
コアーティとは中南米に棲むリスのようなネズミのような動物で大きさはウサギくらい。ジャングルの中をてとてと歩く可愛らしい生き物である。
「受付はどこですかー?」
「ホットシャワー付きのダブルルームはありますかー?」
などと冗談かましながらテントを張る。
「見ろよ。吹き抜けの天窓や、中庭まであるんだぜ」とホセが自慢げに続ける。
本当だ。
洞窟の一部が長い廊下のようになっていて、天井は岩の裂け目が廊下に沿って続いている。空が見え、地面には水が流れてちょっとした植物が生い茂っている。なかなかいい雰囲気じゃないか。気に入ったぞ。

宿に着いてすぐ大雨となったが、しばらくしたら止んだ。
昼飯後に外に出て、近くの池で水浴び。
周囲の霧がいい感じで湯煙情緒を醸し出してくれているものの実際にはめちゃくちゃ冷たくて5分と入っていられない。それでも汗を流せてさっぱりしたし、上がると体もぽかぽかしてきた。

Roraima4-1その後、ホセの案内でブラジル側の崖まで歩いていくことに。
またもや靄ってきて視界ゼロ。ホセなしでは無事に宿まで戻ることはできないだろう。
崖に着いても、その先は真っ白な雲が下からもくもくと沸いている状態。崖下は当然高さ1000メートルの絶壁のはずなのだが、見えないので怖くも何ともない。
そのうち晴れるかもと、しばらく待っていたが、逆にまた雨が降りだしてきた。4人で岩陰にまるまって身を隠し雨宿り。

ふと近くの地面に目をやると、そこには小動物の骨が。
全身骨格の標本のように、きれいな形で残っている。尾が長く、ぱっと見はネズミのものようだ。
ホセが慎重に調べながらつぶやく。
「ロライマにネズミ?聞いたことがない。それにネズミなら門歯があるはずだ。見てごらん。ギザギザの歯しか付いていないだろう。ネズミじゃない。だとしたら一体何の骨なんだ?」
「ひょっとしてまだ発見されていない新種じゃねーのか?」
「・・・かもしれない」
「よし、第一発見者の俺が命名してやろう。ロライマ・マサネズミだ」
「ハハハ、そうだな。新種のマサネズミだ」

その後もさらに雨宿り。
なかなか止む気配がなく、このままでは戻ることもできない。
ホセが持ってきたロンを回し飲みしながら体を温める。
トモ君がいう、
「パチャママに祈ったらどうかな?」
「そうだね、パチャママにもロンをおすそ分けしよう」
ホセがちびりとロンを地面に垂らす。
するとどうだろう。本当に正面の雲に切れ間が広がり始めたのだ。
「見ろ!パチャママのプレゼントだ!」とホセ。
オイオイオイオイ!こんな即効性の神様なんてホントにいるのかよーっ!
全景ではないものの、下まで見下ろすことができるほどになってきた。眼下にはブラジルの大ジャングルが広がっているのが
わかる。近くにあるはずの「ロライミーニャ(小ロライマ)」と呼ばれるテプイまでは見れなかったものの、それでも凄い。
雲の間の切れ間から薄っすらと垣間見える深緑の大地。写真には収めづらかったのだが、なんだか妙に神々しいものを見たような気分だった・・・。

また靄の中を引き返し、宿に戻る。
晩飯はミートソース・スパゲッティ。見ているとちゃんとホセが作っていた。
今日はこの深い霧の中、ちゃんと道案内できていたし、かなり見直したぞ、ホセ。へなちょこなんていって悪かったな。お前は立派な名ガイドだよ。

その夜は一晩中雨が降り続いていたようであった。
干してある靴下、きっと乾かないんだろうなー・・・。