久しぶりの三浦しをんさん。

うふふ。やはりおもしろいです。
強く風を吹かせたり、舟を編んだりさせる筆者が今度はおとなの、決しておしゃれだったりかっこよかったりするわけではない女性たちを描いています。
たぶん、たぶんだけれど、この本のおもしろさは中年にならないとわからない。

舞台は知ってる杉並区善福寺あたり。駅まで徒歩20分のふるーい洋館。あの辺りかなぁとなんとなく思い浮かべて読みました。ほんと、のどかな場所。新宿すぐなのに、川、公園、畑。

その洋館に住む女性たち、母と娘と娘の友達?というにはさらっとした関係の女性ふたり。敷地内のなんと呼んでいいのかわからない先先代の頃から住んでいる定年すぎた男性。

ここからは、ネタバレっぼいとお断りして。


ストーカーや強盗やちょっとした出会いに父の謎など、どかん!という出来事ではないような、いや出来事かな?を乗り切っていく話。

いいなぁって、まず思いました。でも、この4人の今の幸せって期間限定なのかもしれないっても思った。恋人登場の予感だったり、母親もいつまでも若く元気なわけでもないし、謎の敷地内男性だってそうだろうなんて。
でも、いいなぁ。

つまりは、人は孤独ってことを感じさせる。
孤独はつらいよねって。
幸せというか楽しそうな場面なのに。

父の存在というのも仕事の存在についても、いろいろところどころ感じさせる。

母にとって父や夫も稼がなくて権利収入的なものに頼りうだうだ?してる存在。おとうさんは、家族のために働いてくれるのよ。という言葉が存在しない家庭で父、夫はいかなるものなんだろうと。娘は父という存在を知らないで大きくなるからますますわからないんだこれがまた。
この母にとって、夫の存在はなにを求めていたんだろう。
さらにいってしまえば、定年後の男性に妻はなにを求めるんだろう?年金以外にーなんてふと思ったりするわけで。

この家の母以外の女性は、仕事をしている。やめようとは微塵も思っていない。独身だからというわけでもない。仕事は手放すものではないと何気なく話してる。

カラスと河童の独白。カラスの視点はわかりやすく若さと環境を説明してクールなのに、河童は、なんというか、ロマンチックと呼ぶべきであろう甘さを語るのだ。あれまあです。

そうそう!と思ったのは何ヶ所かあるけど、
母親の娘に対する舌鋒は、剣のごとく鋭くしかも抜けにくいトゲが生えたものだと相場が決まってる。
だったかな、ここは笑った。ねー。

この表現だけでなく、いろいろな女性の複雑で飲み込む感情や態度が、さすがしをんさん!と思う。思ってることなんでも言う世代じゃないし、必要なことだって時と場合によっては飲み込むから。

細雪を土台にしてリスペクトして書かれてる本だと文章の中でもうバラしてるけど、全然。
現代版細雪じゃない。

来年テレビ化されるとか。
誰がキャスティングされるのかなぁ。

変な人もってこないでね。生々しい人とか賢そうな人とか、美しすぎる人とか。勝手な注文でした。