もう行ってきてから随分時間が経っちゃったけど・・・


 アメリカの三大国立公園の一つ、ヨセミテは、リピーターが一番多い国立公園なんだとか。グランドキャニオンとイエローストーンもいつか行ってみたいけど、今回はそんな人気のヨセミテに行ってきた。ヨセミテって名前はインディアンの言葉からきたみたいで、「ヨセマイテ」とかいう言葉が確か「熊」って意味だったかな?あーもう忘れてきてるわ。まぁとにかくその「ヨセマイテ」だか何だかって言葉がだんだんヨセミテになっていったらしい。


 サンフランシスコはその独特な地形によって、夏の日中でも20度前後と涼しく、ちょっと古い家になると冷房なんて備えていないっていうくらい過ごしやすい気候になってるらしいんだ。これねー、行く前にガイドブックとかで読んでたから一応知ってはいたんだけど、まさかあれ程とは・・・。特に夜はほんとに寒い!7月だってのに普通に10度きってたからね。Tシャツ一枚でふるえながら街を歩いて初めて実感した。


 そんなサンフランシスコからヨセミテへ向かったんだ。バスで行ったから途中は全然わかんなかったけど、いつの間にか外は40度超・・・。もう陽射しがちくちく刺さってくる感じ。関係ないけど、デスバレーは50度超らしいから、そりゃいったいどんな世界なんだ?って感じだわ。数年前まではサハラ砂漠より暑いトコだったらしいしね。


 途中でマリポーサって村に寄った。そこは時代の流れから遅れて、今でもゴールドラッシュの余韻が残っているかのような、少し原始的な村。時代遅れって感じじゃなくて、自ら時の流れに乗ることを放棄したって感じかなぁ。古い感じだけど、そこに誇りを持っているような、そんな村。そしてこれから向かうヨセミテが神聖な場所なのだと語りかけてくるような、そういう村。


 舗装された山道のカーブにはガードレールが無かった。無いことで注意力が上がり、結果的に事故が減るんだとか。日本ではあまり見ない気がする。しばらく進むと道は川沿いになり、程なくして公園の入り口へ。「おぉ~、さすがに入り口もでかい!」って感動してみるはずが、実は料金所が一箇所だけ。よく見ると道の脇に「ヨセミテ入り口」みたいな小さい看板があったけど、これにはちょっと拍子抜け。まぁ自然を大事にしてるってことなのかね。シンプルだった。


 ヨセミテバレーを一望できる駐車場から見える景色は壮大で、神々の庭と呼ばれるのもわかる気がした。もう大きすぎて、今自分の目に映っているものが一体どれくらい大きいのかを判断できない程だった。何せ1000m級の岩だからね。下から見たけど、最初は200メートルくらいかなって思ったんだ。そしたら近くにいたおばあちゃんが「上のほうにに出っ張った岩が見えるでしょ?あの小さいやつ。あれが200メートルよ」って教えてくれた。びっくり。滝は水が妙にゆっくり流れてるように見えるんだけど、それは滝が大きすぎるからで、実際水は遅くない。俺は日帰りで行ったんだけど、1週間くらいヨセミテにとどまる人も結構いるらしい。そりゃそうだよなー、こんな広いとこ1日じゃ回れないって。東京都の1.5倍の面積らしいから。


 帰りにベイブリッジに差し掛かると、サンフランシスコ全体に霧がかかってた。実はこのときが俺にとって最初の霧で、それまでは晴天だったんだ。滞在中ずっと霧ってのもイヤだけど、「霧の街、サンフランシスコ」って有名だからね。霧みれて良かった。しかもその霧が凄いんだ。本当に雪山があるかのようなはっきりした霧が町全体を覆ってて、幻想的というか普通に怖いというか、津波に襲われているようにも見えた。バスの中から写真とって後からみたら、窓についてる鳥の糞のほうが気になってちょっとショック。


 そんな感じの1日。

 ユニオンスクエアの近くにあるケーブルカーの始発駅の辺りは、デパートや有名ブランドの店が立ち並ぶショッピング街。だから車道と重なるケーブルカーのレールの両サイドは、ちょっと見上げなきゃてっぺんが見えないビルが多いんだね。このケーブルカーは街の人の交通手段であると同時に、観光の目玉でもあるから、待ち時間は長いわ値段はやや高いわで、交通手段としてはイマイチ。でもまー俺は観光客だからさ、やっぱりここまできたら乗るしかないでしょ。


 丘の上に向かう坂道を、ギ~といううるさい音を立てながらゆっくり上っていく。走る歴史って言われるくらい古いモンだからね、このうるささがまたいい。キ~ン カンキ~ンって感じでベルが鳴る。運転手が鳴らしてるみたいだ。手すりにつかまりながら立ち乗りしてた俺は、横に大きく身を乗り出して、迫りくる(といってもゆっくりなんだけど)坂の上の景色と、遠ざかる坂下の景色を交互に眺めてた。近くに座ってた綺麗なお姉ちゃんからしたら、田舎モンの観光客に見えてたかなぁ、まー実際そうだからいいんだけどさ。カツンッと音がした、と同時に俺のつま先に振動が。どうやら路上駐車してた車のサイドミラーちょっと蹴っちゃったみたい。俺が足伸ばしたんじゃなくて、そのくらい近かったんだよ。途中に駅(といってもバス停みたいな標識一本)があるから、そこで一応はとまるんだけど、始発駅でみんなギュウギュウに乗るもんだから誰も乗れない。「Sorry. This car is totally full. Next car is totally empty!!」 黒人の運転手の言葉にお客さんが笑う。そういう雰囲気。「ブッシュのファンは降りてくれ」っていうジョークも、西海岸ならではのリベラルさを感じさせる。


 坂の上からの景色は綺麗だった。綺麗っていう2文字だと伝わりきらないけど、綺麗って言葉が一番しっくりくる。真っ直ぐ下のほうへ伸びていく坂道、つまりそれは今登ってきた道。両脇の建物もいいスパイス。視線を少しのばせば広がる海。それはまるでヨーロッパの街のようだった。


ヨーロッパ行ったことないんだけどね。

 ネブラスカに来てもう4年目ともなると、毎日がただ同じように過ぎていくという罠にはまりかねない。それはつまり人生の浪費って事で、一週間前の自分と今の自分のどこが違うのか?っていう問いに答えられないかもしれないのは、こりゃかなり危険な状態じゃないですかね。まー今いる街、っていうか村?は小さいし、人もあまりいないし。てことは行く所も限られていれば、出会いなんてのはもっと限られてるってこと。マンネリ化した毎日の中で、それでも人生に対して何かしらの意欲を持ち続けるのは、頑張ってたけど正直きついと思ってた。


 そんな時にサンフランシスコに旅行にいけたのは幸運だった。


 その日俺はホテルを出て、着いたばかりの見知らぬ街を歩き出した。ホームレスの人達が「おい!」って微妙に日本語で、もしかしたら俺の知らない英語で?話しかけてくる。悪いけど金はあげられないよと、俺は言葉ではそう思いながらも、本当に悪いとはこれっぽっちも思ってない。前からは黒人のマッチョの兄ちゃんが無言で「道あけろ」って雰囲気出しながら歩いてくる。なんか目あわせたらやられそうな感じだったけど、それでなくても俺はよけただろう。後ろからはスーツに金の腕時計したサラリーマン。おそらく金融街へ向かっているんだな。少し遠くに見えたビル群が多分それだ。アメリカの金融を動かす2大都市、東はニューヨーク、西はサンフランシスコ。西の金融の中心であるこの街のファイナンシャルディストリクトで働く彼らは間違いなくエリートだ。そんなことを考えながら1ブロックを歩ききる。


 知らない街を歩くのって、それだけで凄く刺激的なことだと思う。旅行好きの人は生き生きしている。


 ほんの3分くらいの出来事だけど、俺の冬眠しかけてた脳を活性化させるには十分だった。普段と違うこの体験をみすみす見逃してしまう程、俺のセンサーは鈍ってはいなかったってことだ。そういう意味ではこの3分は、普段の何時間分にも成りえるものだった。まー普段がそんなんじゃ困るんだけどさ、それはこれから改善すればいいと思う。時間にも密度があるってことを、言葉としては知っていたけど、それだけでは意味が無い。わかるっていうのは、つまりそういうことで、俺は少しわかったんだと思う。