以前、大橋眞氏(徳島大学名誉教授)が典型的な陰謀論者であることを記事にさせて頂きました。
「新型コロナウイルスなど最初から存在しない」という連中の情報源をたどっていくと大橋眞氏と『Dr. Andrew Kaufman(アンドリュー カウフマン)』の主張にたどり着きます。
両氏は、『公開されている”新型コロナウイルスの遺伝子の配列”は、既知のウィルスや細菌などに由来する様々な遺伝子が混ざってできたものである。』と主張しています。
また、大橋氏は「新型コロナウィルスはコッホの原則を満たしていない」とも言っていますがこれも間違いです。満たしています!
それに、仮に満たしてなくともウィルスの存在を否定するものではありません。
(拙の過去ブログでこの説明をしています。)
両氏の主張である『新型コロナウイルスの遺伝子の配列は、細菌などに由来する様々な遺伝子が混ざってできたものである。』とは、どういうことでしょうか?
新型コロナウイルスは存在しないと考える人たちの間では、この図が非常にわかりやすいと”評判”です。
あいこちゃん @nrR2ppeIR8msbev
ウイルス自体が存在していません。世界はNatureの論文をもとに動いていますが、この論文にはウイルスが分離されてたことが書いてありません。これは科学ではありません。大変なことが起きています。
カウフマン氏の『新型コロナウイルスの遺伝子の配列は、細菌などに由来する様々な遺伝子をつなぎ合わせたものである。』という主張を図で表しています。

しかし、あいこちゃんの描いた図が正しいのは赤線で囲った部分だけです。

実際の解析結果を見ながらその理由について説明していきます。
こちらが、復旦大学の論文に掲載されている、次世代シーケンサーを用いた『RNAシーケンシング(RNA-Seq)』という手法で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の遺伝子配列を解析した結果になります。

https://www.nature.com/articles/s41586-020-2008-3/figures/6
え?何これ?このグラフが遺伝子の配列を示しているの?
不思議に思われるかもしれません。
実は、このグラフを拡大すると、下の図ように、青いバーで示された『リード』と呼ばれる短い配列が山のように積み重なっています。(RNA次世代シーケンシング(RNA-Seq)解析)

RNAは、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)と呼ばれる4種類の塩基からなります。そして、1つのリードで、75~100塩基の配列を決定する(”読む”)ことができます。この配列を読むことをシーケンシングと言います。シーケンシングする機械をシーケンサーと呼びます。
RNA-Seqを行うことで、下の図のように、AUGCCUA(実際の長さは75~100塩基)、UGCCUA、GCCUAG、CCUAGG、UAGGC、GGCUUAといった、リードの配列情報を積み重ねて、AUGCCUAGGCUUAGAAというRNAの配列を決定することができます。
積み重なることで、その重なった部分の配列(図中オレンジ色の部分)は何重にもチェックされます。図のように、7本のリードが積み重なっただけでも、十分にその配列に対する信頼性が生まれます。

あいこちゃんさんの描いた図のように、ただ単に、気管支肺胞洗浄液に含まれるRNAの中から、AUGCCUAGと、GCUUAGAAを繋げて、AUGCCUAGGCUUAGAAという配列を決定した訳ではありません。

RNA-Seqの基礎知識を理解した上で、もう一度、復旦大学の研究チームの論文の結果を見てみましょう。
横軸は、SARS-CoV-2の遺伝子配列上の位置(Position)を示しています。SARS-CoV-2の遺伝子の長さは約3万塩基です。
縦軸は、75~100塩基のリードが何本積み重なっているかを示しています。今回の解析では、平均604本のリードが積み重なっています。

重なった配列が何重にもチェックされることで、細菌などに由来する”余計な配列”が入り込む余地はありません。これが『RNA-Seq』です!
補足)RNA-Seqは、主に、遺伝子発現量の定量(リードの”高さ”の比較)のために用いますが、その原理を応用して、研究チームは、SARS-CoV-2の遺伝子配列を決定しました。(RNA次世代シーケンシング(RNA-Seq)解析)

武漢ウイルス研究所を中心とした研究チームも同様に、RNA-Seqを行い、SARS-CoV-2の遺伝子配列を決定しました(縦軸の上下が反対ですが、こちらの方がリードがわかりやすいですね)。

https://www.nature.com/articles/s41586-020-2012-7/figures/4
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の遺伝子は確かに存在します!
RNA-Seqの解析結果から、『データベース上の新型コロナウイルスの遺伝子の配列は、細菌などに由来する様々な遺伝子をつなぎ合わせたものである。』というのは、全くのデタラメであることがわかります。
そして残念ながら大橋眞氏も、RNA-Seqの基本を理解できていないように見えます。『2kb(2千塩基の意)に断片化』?全く違います。『ショットガン(ショットガンシークエンシング)』は、そもそも、DNAシーケンシングの手法ですし、RNAシーケンシング(RNA-Seq)より一世代前の”古い手法”です。

新型コロナウイルスは、存在しない。その正体は常在性ウイルスのキメラ遺伝子。
https://youtu.be/RjI6uCLDbUw
しかしながら、この論文では新型コロナウイルスを分離したわけではなく、肺の抽出液という多様な微生物や、体細胞に由来する遺伝子の混合物から直接ショットガンという方法で3万塩基対近くのゲノム遺伝子を決めるという方法である。
大橋 眞
http://agora-web.jp/archives/2046546.html
大橋氏の主張の詳細は動画にてご確認ください。

