https://kkbestsellers.net/n/n347593557c9f

 

無料購読は終了いたしました。

 

 

 

書籍内容一部抜粋

 

抜粋始め

なぜN国党を警戒するのか

 作家の内田樹はN国党について「変なひとたちが変なことをすることはあるが、一定程度以上にはならない。それは、100年に一度くらいのことだ」と筆者に語ったが、筆者は100年に一度の事態が起きないように警戒していかなければならないと考える。
 エーリッヒ・フロムは『自由からの逃走』(NTT出版)において、ファシズムの基礎をなす逃避のメカニズムとして「権威主義」「破壊性」「機械的画一性」の3つをあげて分析している。
 権威主義メカニズムは「人間が個人的自我の独立をすてて、その個人にはかけているような力を獲得するために、かれの外がわのなにものかと、あるいはなにごとかと、自分自身を融合させようとする傾向がある」と説明されるが、本書の第五章に掲載した浜田聡医師のインタビューではその傾向が十二分に見て取れる。
 破壊性メカニズムにおいては、「中産階級は、その敵意を、主として道徳的公憤によそおって表現していた。それは、生活をたのしむ力のある人間にたいする、はげしい羨望(せんぼう)を合理化したものだった」と説明されるが、N国党の支持者の中にはN国党批判者である私に対して「自分は社畜で苦しい、お前は社畜になったことがないからわからない(だからN国党を批判している)」というコメントを残された方が少なくない。
 自分の生活が苦しいこと、それは大きな力によるものであるというわかりやすいストーリーは、自分の嫉妬心を公憤と錯覚せしめ、人間性を埋没させていく。機械的画一性においては「他のすべてのひとびととまったく同じような、また他のひとびとがかれに期待するような状態になりきってしまう」「孤独を克服する『正常な』方法が、自動人形になることである」と説明される。
 N国党員はユーチューブに膨大な量の動画をあげており、それを批判すると支持者からの膨大な罵詈雑言(ばりぞうごん)が届く。その様を見れば、人間関係が希薄であっても、〝N国党の支持者である〞〝NHKという巨大権力と闘っている〞という妄想のもとで獲得される機械化された団結は、前述のとおり孤独なひとびとの寄る辺になっているのである。
 若年層がもはや新聞やテレビを見ず、ユーチューバーがタレントのようになっている現代において、その若年層が皆選挙権をもったとき、N国党がより大きな存在にならない、という保証はどこにもない。

抜粋終わり