
インドの農村の表紙。
今週は、14ページに渡るインド特集。
今週のKAL's cartoon。[2]

アメリカの大統領選の風刺。
オバマは、雇用問題のおもりを右足につけながら、様々な問題でお手玉をする。
崖っぷちに立った財政赤字、怪獣のような債務、時限爆弾と化した社会保障制度、亀のような低経済成長、棘だらけのアフガニスタン、中東という手榴弾、核兵器を巡るイスラエルとイランの争い。
一方のロムニーは、3つだけで悠々とコントロールしている。
ベインキャピタル、マサチューセッツ州の知事、ソルトレークのオリンピック。
オバマとロムニーの選挙前演説での争点を風刺した絵。
10月3日にいよいよテレビ討論会。
ロムニーにとっては、ここが勝負所。
これで勝てなけりゃ、もう無理だ。
俺たちに明日はない、と覚った方がいい。
今週のLeadersから。[3]
夢を追い求めるインド。(In search of a dream)
以下、内容。
インドは、65年前に独立を果たし、自由民主主義国を目指すビジョンを掲げた。
そして、今では多くのインド国民はその自由を謳歌している。
しかし、経済に関するビジョンは、上手く行かなかった。
91年の財政危機をきっかけに経済改革をした結果、サービス業が繁栄し、所得や識字率は向上し、平均寿命も伸びた。
その一方で、外国からの投資を呼び込もうとせず、非効率的な中小企業を優遇している。
政府が、経済を大きくコントロールし、助成金を与えているため、物価は上昇している。
また、サービス業には訓練された労働者が多くいるが、製造業の基盤を作ることに失敗した。
最後に、公的部門の汚職が産業の足枷になっている上、医療と教育の分野での基本的な機能すら果たしていない。
これらの結果、貧困層が救われず、国の成長は鈍化し、インフレ率と財政赤字は上昇している。
これらの問題を早急に解決し、成長率を引き上げるには、さらなる改革が必要だ。
インドの労働者は、中国人労働者と同じくらいコストが掛かるため、その原因である労働法を廃止すべきだ。
外国からの投資に関する規則を緩和し、金融や高等教育、インフラなどの水準を引き上げる必要がある。
電力、石炭、鉄道、航空などの分野における国の役割を縮小させなければならない。
英国統治時代から続く土地購入に関する規則は改正する必要がある。
経済学者達の間では、必要な政策について広く意見が一致している。
しかし、政治家の間では、それらの政策に対して、頑強な抵抗がある。
インドは、政治的な自由だけでなく、経済の自由も約束しなければならない。
そうすることで、生産的かつ競争力のある開かれた経済が実現され、すべての国民に成功のチャンスが広がる。
これは、あらゆる場合に政府の役割を小さくすべしということではなく、必要のない分野からは手を引くべしということだ。
そして、インフラへの投資計画や市場の規制のような分野では、政府はその過程を透明にする必要がある。
インドの政治家はこうしたビジョンを掲げ、有権者に対して明確に伝える必要がある。
多くの国民は自然とネルー=ガンディー王朝に目を向けるが、現在の一族はリーダーシップを発揮できていない。
こうした政治家たちがインドの発展の助けになることはなく、むしろ妨げになっている。
インドの国民は、今こそ過去を振り払い、彼らと決別すべき時だ。
インドは、自らが進むべき方向とそれに必要な困難な手順をきちんと理解し、
夢を追い求めることの価値を国民に納得させられる政治家を求めている。
ひとこと
The Economist誌は、インドがさらなる成長をするためには、経済の改革が必要であると指摘する。
そして、新たな方向性を明確に打ち出せる政治家が必要だと言う。
今週は、この記事以外に14ページの特集が組まれている。
以下、それを織り込みながら書いてみよう。
インド経済は、予想を下回る成長率。
2012年の予想成長率は、6.1%。
あらま。7%にも行かなかった。
反面予想インフレ率は8%超え。8月は10%。
「あれれ~、おかしいぞ~」と言って、コナン君を呼んで来なくてはいけない事態になってる。
コナン君ではないけれど、インド国内でどんな現象が起こっているか軽く観察してみよう。現場百遍。
まず、交通。[4]
Transport Corporation of India社は、今年5月にこんな報告書をしている。
17本の主要道路全てが、混雑している。
デリーからムンバイまでの1380kmの道のりを運転するのに、平均で3日間かかる。
平均時速に直すと21kmだ。
また、道路網は毎年4%ずつ拡張されているが、それを上回る11%ずつ交通量が増えていると報告している。
鉄道の状況も、道路状況よりも良いというわけではない。鉄道による輸送料も高いままだ。
結局、混雑した道路の方を選択することになり、大型トラックに荷物を強引に詰め込んでいる。
次に、産業構造。

GDPの59%をサービス産業に頼っている。
特に、IT企業のTCSやHCLのような企業が牽引している。
工業と農業は、それぞれ2割程度。
製造業は、GDPの15%だ。
サービス産業に頼る傾向は、ますます拍車がかかっている。
それから、教育。[5]
政府の公表では、識字率は1991年の52%から74%にまで改善した。
ある調査によると、インド人の学生(students)のうち40%が私立の学校に行ったり家庭教師を雇っている、という。
しかし、世界銀行のデータによると、就学児の割合は他のBRICsよりも低い。(下図)

また、クレディ・スイスが2011年に行った調査では、収入のうち7.5%を教育に回すという。
政府に属するエコノミストは、この出費を行き過ぎだと指摘する。
それから、教育の質の問題もある。
時間になっても教室に現れない教師もいるし、試験に受かるために学生達が先生に賄賂を渡している。
最後に、貧困。[6]
Naandi Foundationの報告書によると、3歳未満の子供の46%が標準体重を大きく下回っているという。
また、子供全体のうち47%が未熟児であり、少なくとも16%が極端な栄養失調であるという。
インドには、こうした貧困層の人々への食料援助制度がある。
しかし、それは機能していない。
食料不足ということではない。政府の倉庫には、膨大な穀物が蓄えられている。
これが、経済大国と呼ばれそうになったインド。
その昔、ソ連天国論や中国万歳理論もたくさんあったが、インド経済大国論も似たようなもんだ。
単に人口が多いだけで、経済の実情を見てみると脆弱。
ま、でも侵攻してこないから安心。
どうしてこんなことに・・・。
それは、迷探偵の小五郎おじさんの言葉。
目暮警部でももっとまともな推理をする。
期待されていたのに、どうしてこんなことに。
何故。
原因は何か。
それは、資本主義の精神(der Geist des Kapitalismus)を欠いているからであります。
かかる精神が無ければ、経済の自由化、ひいては資本主義経済を築くことはできないのであります。
資本主義の精神とは何かを考える際に、分かりやすい例を一つ。
麻生元首相の著書「とてつもない日本」のはじめにより。
麻生氏が、2005年に外務大臣としてインドを訪問し、日本が出資した地下鉄を視察した際の出来事。
その地下鉄公団の総裁から言われた言葉。
自分は技術屋のトップだが、最初の現場説明の際、集合時間の八時少し前に行ったところ、日本から派遣された技術者はすでに全員作業服を着て並んでいた。我々インドの技術者は全員揃うのにそれから十分以上かかった。日本の技術者は誰一人文句も言わず、きちんと立っていた。自分が全員揃ったと報告すると、「八時集合ということは八時から作業ができるようにするのが当たり前だ」といわれた。
悔しいので翌日七時四十五分に行ったら、日本人はもう全員揃っていた。以後このプロジェクトが終わるまで、日本人が常に言っていたのが「納期」という言葉だった。決められた工程通り終えられるよう、一日も遅れてはならないと徹底的に説明された。
・・・これだけ大きなプロジェクトが予定より二か月半も早く完成した。もちろん、そんなことはインドで初めてのことだ。・・・
我々がこのプロジェクトを通じて・・・最も影響を受けたのは、働くことについての価値観、労働の美徳だ。労働に関する自分たちの価値観が根底から覆された。日本の文化そのものが最大のプレゼントだった。
悔しいので翌日七時四十五分に行ったら、日本人はもう全員揃っていた。以後このプロジェクトが終わるまで、日本人が常に言っていたのが「納期」という言葉だった。決められた工程通り終えられるよう、一日も遅れてはならないと徹底的に説明された。
・・・これだけ大きなプロジェクトが予定より二か月半も早く完成した。もちろん、そんなことはインドで初めてのことだ。・・・
我々がこのプロジェクトを通じて・・・最も影響を受けたのは、働くことについての価値観、労働の美徳だ。労働に関する自分たちの価値観が根底から覆された。日本の文化そのものが最大のプレゼントだった。
ここから分かる通り、インド人には「納期」という概念も無く、また労働が美徳であるという発想も無い。
これらの考え方は、資本主義特有の考え方。
むしろその発想が出てくる方が歴史的に見て珍しい。
これに、目的合理的な考え方などが加わると、それが資本主義の精神。
資本主義の精神が無いから、流通が滞る。
道路が混雑していても、「納期」が無いので、のんびりやりましょ、ということになる。
資本主義の精神が無いから、公務員に汚職が蔓延する。
政府との契約という考え方が無いから、お金をもらっても職責を果たさない。
代わりに何をするかというと、副業又は汚職。
資本主義の精神が無いから、倉庫に穀物が溜まる。
ある目的に沿って、計画通り、時間通りに行動を取れない。だから、計画と違って倉庫に溜まってしまう。
資本主義の精神が無いから、伝統主義が打ち壊せない。
インドでの伝統主義とは、カースト。
インドがこれから先、経済大国になりたければ、資本主義の精神を育成するしかない。
それまでは、上位カーストにいる特権階級の人間だけが利益を享受する社会。
因みに、IT産業や優良な企業に勤められるのも、特権階級。労働貴族ってやつだね。
書いていて思ったのだけれど、インドに円の経済圏(≠通貨統合)を作っちゃおうか。
資本主義の精神は育っていないけれど、まあ平均的に見て中国人よりは信頼しやすい。
インドに日本インド(株)社を作って、インド工科大学のようなところから優秀な労働者を雇おう。
そして、納期や契約、労働が美徳である、ということを訓練しよう。
生産物(主にプログラム)は、アメリカに売っちゃえ。
お給料は円での支払い。
ついでに、経済が弱っちいロシア君。キミも円の経済圏に入れてあげよう。
その場合の最単純モデルを考えてみる。金利その他諸々の条件は考慮しない。
すると、流れはこんな感じ。
日本の銀行がA社に1万円を貸す→日本のA社がインドで1万円分の労働力でプログラムを作成→インド君は1万円でロシア君から潜水艦を購入
→ロシア君は日本のA社からハイテク技術を1万円で購入→日本のA社は1万円を銀行に返す。
するとびっくり。日本に1万円がまた戻って来ているだけでなく、1万円分のプログラムが手元に残っている。
わーい。
これ、みんなが大好きレーニンさんの言う「帝国主義」なり。
帝国主義国は金融資本(銀行資本+産業資本)を輸出し、植民地はその資本を輸入する。(「帝国主義」より)
レーニンさんの言う通りに考えると、日本が帝国主義国で、インドとロシアは植民地。
一度は滅んだ大日本帝国が、21世紀になってまさかの復活。
世界史上、二度目の奇蹟。
課題はやっぱりアメリカさん。
ドルの基軸通貨を揺るがすようなことは許すはずがない。
困っちゃうなあ。
道路や鉄道など輸送用のインフラ整備だって、日本は大得意かつ大好きだから良いと思うんだけどなあ。
それに植民地と言っても、南アメリカに行ったスペイン人やらアメリカに渡ったピューリタンのように現地人を大虐殺するわけじゃない。
日本人に何十万、何百万人も殺すような大虐殺なんかできません。
マニュアルを渡されても、多分無理。
インドは、日本から見た地政学的にも重要な地域なので、お互いの利益に沿った良好な関係を築いて行くのが良いと思う。
以上、短い文章だけど要約しよう。
インドの経済は、その成長が緩くなってきている上、脆弱(ぜいじゃく)である。
IT技術は高いものを持つが、未整備のインフラ、質の悪い教育と労働力、公務員の汚職などの問題を抱えているから。
より決定的なことには、資本主義の精神を欠いているためである。
そのため、The Economist誌が指摘する経済改革とそれを行う政治家を準備するだけでは、さらなる成長は見込めない。
例に挙げた地下鉄のように、完璧ではないものの、日本はインドに資本主義の精神を教えることができる。
もしインド国民が望むのであれば、日本はそのための協力を惜しむべきではない。
仏教発祥の地に優曇華(うどんげ)の花を咲かせることができるかもしれない。
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[1] The Economist, Sep 29th 2012
[2] KAL's cartoon
[3] In search of a dream
[4] Express or stopping?
[5] A billion brains
[6] Naandi Foundation, "HUNGaMA"(PDF)