よく、すべてどうでもよくなってしまう事がある。

特に理由が見当たらないのがこの症状の悪いところで、気がついたらたくさんの事がどうでもよくなってる。

極端に冷たくなれる。静かに。

何か起きて急に死んでもいいし、自分じゃあない誰かの情報なんてのもいらない。

燃え尽きて、何もしたくない。

無駄にストレスが溜まって誰かを

なんて物騒な考えも出る。たくさん。

……というところまでキーボードを打ったのはいいものの、ここから先はなんて書こうか分からない。

実際に自分自身がこういう状態に陥っている、と自覚してため息をついた。

こんな時は寝ようにも寝られない。

……こんな時に誰かいてくれたらなぁ、と現実を見ない思考がこの虚無感を促進させる。

そうしているうちに誰かを蔑む事に時間を費やして、また嫌になる。

どうしてこうなんだろう。

ため息。

よくため息をつくと幸せが逃げると表現されるが、そうは思わない。

呼びよせる方法がないくせに、逃がしてばっかりだったら、この地球上の空気が幸せだらけで飽和して、ありとあらゆる不幸を打ち消してくれるのではないだろうか。

そんなメルヘンな思考は持ち合わせていないため、僕はやはりため息をつく。

幸せは都合よく拾う物。

僕はそう思っている。

例えば……そう、道端に落ちている財布を拾う事によく似ている。

中身はまちまち、小銭ばかりか大金か……持ち主が異性だったら届けてやれば出会いになるかもしれない。

中身をくすねるかどうかは自分次第。

誰かを不幸にして、自分が幸福になる。

相手が赤の他人だったら罪悪感も少ないだろうし、まったく都合いいよね。

ため息。

外に出なけりゃ財布は落とさないし、拾うこともない。

つまらない。

この落としては拾ってのサイクルに、僕は疲れてしまっていたため、いつものようにキーボードを目の前にカタカタと音を立て打ち続けるのだ。

どうだっていい。

死んだっていいし、誰かの情報なんてのもいらない。

幸せを拾って舞い上がってしまうのは仕方が無い、拾い慣れて無いんだから。

慣れたら"ああ、また財布か、いただきまーす"と薄れて行くのだろうが。


死ぬのが幸か不幸か知らない。
誰かの幸不幸だってどうでもいい。

そうやってすべてがどうでもよくなってしまうのが悪い症状。

こう、死にたくなる。

スパッと。

ポツリポツリと赤い点が白いキーボードに落ち、キーが彩られるとすぐさまボタタタッと先ほどの二三滴の血とは違い、大量の血が流れ出る。

机とキーボードが飛び散った血で点や線を引くが、クラクラと失血による意識の朦朧とした感覚ににへら、と笑うしかない。

厨二臭い?メンヘラ?

なんだっていい。

もう、どうだっていい。

幸せは歩いてこない、財布が歩いてくるかよバーカ。

人から幸せを奪って、下らない時間に消費なんてそんな胸くそ悪い事なんてさせない。

おえ……。

気持ち悪い。

血は依然として流れているが、先ほどのピークには到底及ばない。

スパッと。

血が出るのはいいが、痛いのは嫌だな。

ターッと溢れ出て、またクラクラして、あ、こrrrっれddssっさ



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先日、兄が死にました。

自殺だったそうです。

授業の最中、職員室に呼ばれると疲れた顔をした母が座っていました。

「お兄ちゃんが死んだ」

そうポツリと私に向かって言うと黙って立ち上がって先生方に会釈をし、何ひとつ社交辞令的な挨拶も無しに私を外に連れて車に乗り、着いた病院では白い布を顔にかけられた兄がベットで横になっていました。

母は相変わらず疲れた顔をしていました。

私は現実を飲み込めなかったため、ゆっくりと兄に近づいていき、恐る恐る、布を取った。

白い。

不健康だとは知っていたが、その白さに拍車がかかってただただ白かった。

顔は安らかにつくられていた。

これまた実感がわかない。

兄が死んだ。

しばらく家庭では無言で重い空気が続いた。

とうとう私が食卓で「兄が死んだ」と呟くと、母が泣いた。父も泣いた。

しかし、私は泣けなかった。

兄はいわゆる都合がいい人で、お金をたかられては律儀に払ってしまう人でした。

そんな兄の不幸を知っていた私は、何もできなかった私は泣く事ができませんでした。

兄が引きこもってからも、何も感じませんでした。

ただ"ああ、そう"とどうでもいい反応をしていました。

私の幸せを奪っていた兄なんて、どうでもよかったのです。

回り回った幸不幸は、こうして人間関係を空洞化させる。

どうだっていいですけど、ね。

財布から、財布を取ってまた財布へ。

そんな不毛な事をしていましたが、やはりどうでもよかったのです。

そんな下らない。


死んだっていいし、誰がどうなったって

ああ、暇だ。

風呂に入ろう。