音響兵器研究所では以前より生体(せいたい)マイクの研究と開発が進められている。
生体マイクとは言うなれば生物の耳をマイクに転用したものである。
国家機密のため多くは明かせないが、人間はもとより、様々な動物の耳から細胞を採取し、それを培養、加工し、実用レベルのマイクロホンにするという研究とである。
先日、我々の耳に聞こえるのと全く同じに収録可能な生体マイクが開発された。
それは40年前に音響兵器研究所で始まった、聴力の根幹となる有毛細胞や耳を構成する生体組織の培養といったバイオテクノロジーが一つの製品としてようやく実を結んだ瞬間であった。
兵器開発という観点から見ると生体マイクはまだ発展途上の兵器であり、ようやく第一歩が踏み出せたに過ぎない。
現在の100-1000倍の能力を持って初めて兵器として活用することが可能になる。
まだまだ遠い道のりである。
近い将来、マイクロホンは特殊な場合を除き、全て生体マイクに置き換えられる。
電球や蛍光灯がLEDに変わったように。
生体マイクではないマイクを懐かしく思う日もそう遠い未来ではない。
これまでの人類史を紐解けば分かることだが、マイクロホンの技術を向上させてきた最大の原動力は戦争である。
比喩的な意味ではない。
マイクロホンは戦時には通信やソナーなどにおいて重要な位置を占める。
人類の大量殺戮を公然と容認する戦争のみがテクノロジーを向上させるのである。
極限状態における人類の生きることへの渇望。
不幸なことに、戦争のみがマイクロホンの性能を高めるのである。