「マイクは空を飛ぶか。」

 

 

誰も知らないことだがAKG C451Bは空を飛ぶ。

 

 

 

 

AKG C451Bのカプセル付近にある小さなビスを全て外すと、内蔵された反重力リアクターが起動し瞬時に空を飛ぶのである。

 

(なので、絶対にビスを外してはいけない。)

 

これは冷戦時代にペンシルマイクが要人暗殺用兵器として用いられた名残と言えよう。現在でもAKG C451Bは各国の特殊機関の暗殺用兵器として公然と使用されている。

 

マイクが空を飛ぶだけなら何も問題ないのだが、この反重力リアクターには恐ろしい副作用が存在する。

 

それはリアクター起動時に発生する特殊な電磁波が人間の精神に障害を与えることだ。

 

この電磁波を浴びると人は恐怖や絶望に支配される。

 

 

もう一度言う。

 

絶対にビスを外してはならない。


 

「するな。」と言われるとやりたくなるのが人間の性分だがタブーは確かに存在するのである。

 

扇風機の網越しに指を突っ込みたくなるような好奇心はこの際必要ない。

 

必要なのは石橋をたたいても渡らないほどの慎重さと数秒先の未来への想像力である。

 

この二つのうちどちらか一つでも欠けると取り返しのつかない窮地に陥る。