黒夢 | プロト・カルチャー

プロト・カルチャー

ROUAGEベストより マクロスからではない

2014年1月29日


この日…いや正確には2月9日


黒夢はやっと黒夢に成りえるのだろう…



この武道館は


復活を遂げてから


過去の黒夢を追い続けて


長い空白の歳月を得て


やっと手に入れる事のできた


KINGDOMの入り口なのだから



復活の動機は東條氏からだろうが


the end から5年


デビューから20年経った今


出会って…離れて


その間、お互い過ごしてきたものが


『ZERO』という結論を出したのだ




「黒夢は2月9日で『ZERO』になります」



この言葉をただ額面通り聞いたなら


最後の武道館ということもあり


黒夢は事実上の解散


また無期限活動停止とも取れる



もしくは清春の性格を知る人なら


どうせ嘘でまた黒夢で武道館やるんでしょ?


と読む人もいるだろう



しかしそれは嫌な言い方をすれば


清春を知らない人の浅はかな思考に過ぎない


清春を黒夢からsads、ソロ…


どのタイミングでもいい


長いスパンでライブやインタビューを


追い・思い・受け続けた人ならば



この『ZERO』の意味をよくわかるはず



「お互いもうバンドに特別なものは感じなくなった」


一見突き放す言い方でも


私たちの前では誠実に語っているんです


そこに嘘はない、この空間では



このMCの清春は優しかった


出来る限りショックを与えないよう


1999年活動停止の言葉をワザと言ってみたり


精一杯傷つかないよう言葉を選んでくれた


あの時の活動休止より


一番傷つかず、悲しませない


「愛してるよ…」と言える私たちの為の『ZERO』




「人時とお互いやりたいと思った時、それはバンドじゃなくていい」


清春にとっての『ZERO』になるというのは


そうゆうことなのだ


どんなにキャリアを付けても


バンドをやっても、辞めても、売れても、大きなハコでやっても


結局のところずっと黒夢の影を追っていたに過ぎなかった


それはコンプレックスに近いものだろう


だからこその『黒と影』



この言葉が出た時点で


本当に黒夢の呪縛から開放されたんだと思う


もう後遺症に悩まされることもないのだろう



これが望んでも望んでも


手に入れ難かった初期衝動の自由



本当に手に入れたかった


好きな事を気持ちのままやれる自由



ラストの『Like @ Angel』


予定調和なんかじゃない必然の一曲だった


今まで聴いて来たLike @ Angelの中で


一番大きな『初期衝動』が武道館を包む



そしてバンドマジックが起こる


清春がもう一回『初期衝動~』を歌う


それはただ一人…人時だけに向けての唄だった



その声と姿は


すがる様にも


感情をこらえている様にも見えた…



この瞬間


全員が泣きそうになっていただろう


人時は半分は泣いていた



本当の黒夢になった瞬間だった



この20年間…


いろんな黒夢がいた



化粧をして黒服を纏い


退廃と様式美に満ちた黒夢



スタイリッシュに残酷で


冷たい鮮やかを放つ黒夢



化粧を落とし


メロディアスに女性を労わる黒夢



攻撃的な片鱗を見せつけ


デジタルな偽物を演じる黒夢



過激且つ青臭い


クスリでトリップしたような青春を見せる黒夢



最高速でウネリを上げ


終わりを死に急ぐ黒夢



茶番と嫌気に満ちた黒夢



そしてもう一度、影を追い続けた黒夢…



影の中にはもしかしたら


過去だけでなく


大谷マネージャー、東條さん、佐久間さんもいたかもしれない



それは美しくもあり 悲しくもある



どの黒夢であっても


刺激的で可能性に満ちていて


全てを許すように包み込み


強さも弱さも嘘も共有しあえた



上手く言えないけど


それが黒夢なんだと思う



おそらくはもう


私も追い続けた黒夢を観る事はできないだろう



優しい悲劇の様な空間だった…



ありがとう


ほんとうにありがとう、黒夢



最後にあの時


皆が思い描いていた言葉を…



「俺達も愛してるよ」