「人間の細胞は、一年ですべて変わる。
だから、一年後の私は、物質的にすべてが異なる。
だけど、心だけはとどまる。」
彼女はそう言って、生き返った。
僕は自分を見つめていた。
鏡の中の自分は、滑稽に見えていただろうか。
そこにいた自分は、確かに昔の自分ではなかった。
全くの別の人物。
自分であって、自分でない。
だが、僕であることには違いない。
そう思う“僕”の部分は、何も変わっていない。
まるで違う乗り物に乗っているような気分だった。
所詮、人間は脳に操られているのだという。
人間は、脳に操られるだけの乗り物。
じゃあ、この世に存在するものは何か。
人間という乗り物にのった脳たちの世界なのか。
しまった。
また考えすぎた。
僕の悪い癖だ。
やっぱり何も変わってないじゃないか、僕は。
体が変わり続けていくのならば、それを操縦する脳も最初は戸惑うだろうな。
だから、今、僕は上手く体を操れていないのかもしれない。
自分と自分のバランスが上手く保てない。
本当の自分が、人間としての自分に上手く乗り移れていない。
もっと上手く乗りこなせるようにしなきゃ。
とにかく体を動かすこと。
動かし続けること。
動くのをやめれば、体と脳の差は開いていくばかりだ。
止まることは許されぬ。
動き続けるのだ。
そう言って僕は、
カメラのシャッターを切った。

