長患いの末、救急救命センターに運ばれ心肺停止を3度乗り越え
ICUでの治療に切り替えて2日後の事だった。
死因は多臓器不全。没年77歳。
親父もよく頑張ったし、医療スタッフも尽力してくれた。
ベッドに朝日が差し込んでくる中、眠るように穏やかな顔で逝った。
3回も心臓が止まって、まだ蘇生してくるなんてしぶとさ、親父らしいと思った。
俺は親父に何もしてやれなかった。
日陰者の俺は、通夜・葬儀・告別式なんて親戚や地域の人が集まる義理事には顔が出せない。
田舎なんてそんなもんだぜ。
だから病院のベッドでさよならを言った。
なぜか悲しみはなかったぜ。
先に行くだけだろう。俺も後から行く。
いたって冷静に振る舞えたと思うぜ。
色んな書類にサインして、事務手続きを終わらせて
葬祭センターの黒い車と行き違いにタクシーに乗った。
部屋に辿り着いて、小夏に報告した。
色々話してるうちに、不意に俺がガキだった頃の親父との思い出がよみがえって来て、こみ上げてきた嗚咽を我慢できなかった。
一瞬だったがな。すぐに冷静になれた。
オカンのこれからしばらくの忙しさを考えると悲しみに浸ってはいられない。
ごめんな、表舞台で堂々と助けてやれない日陰者で。
でも、裏でなるだけフォローするぜ。
「あんた泣かんわね。悲しくないの?」
散々泣いて真っ赤な目をしたオカンに聞かれたけど
俺だって悲しくないわけじゃないんだぜ。
人一人が死んだあとってのは猛烈なToDoリストが待ってるんだ。
俺はそれをこなすからよ。オカンは亡骸に付き添って泣いてればいいと思うぜ。
俺が泣くのは殆どすべてが終わってから。
満中陰が明けたころにでもゆっくり泣くぜ。
なんかしてないと、俺もヤバいんだよオフクロ。
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