探し物をしていたらこういうものが出てきた。



たぶん、昔の雑誌のコバルト(季刊誌)で企画した付録。


このカセットテープ自体は非売品である。


お元気だった頃の氷室冴子さんの声が聞けた。


もうじきデビュー10周年という頃だったから年齢は30才前後くらい?


小説家の場合、作品は残っても声はあまり残る機会がないからこれは貴重である。


非売品だからなおさら。


テンション高めの楽しげなしゃべりは、ラジオ番組でもいけそうな感じだった。


「自信作です」


と自分の作品どれもこれもをあんなにきっぱり言い切れるあの自信はどこからきたのだろう?


ゲストが友人で漫画家の藤田和子さんで、途中から対談形式だったのだけれど、藤田さんがそこのところを指摘したら、


「だって、私、自信作しか出さないもん」


という明快なご回答。


あっぱれな女である。


その心意気は見習わせていただこうと思った。


これから電子書籍化候補として契約先に提出する作品は自信のないものは出しません!


氷室冴子さんは、先日肺ガンでお亡くなりになるまでの間、出版しなくなった時期がずいぶんとあるのだけれども、それはおそらく、「自信作」と自分が思えるレベルの作品が書けなかったからなのかもしれない。


完成度の低い連載連発するのと「自信作」を書きあげるまでは出版しないのとどちらがいいのだろう?


ファンとしては氷室さんの作品ならなんでもいいから新作読みたいという人もいれば、小説家氷室冴子が自ら「自信作」と太鼓判押して世に出す作品じゃないとレベルダウンにがっかりする人もいるかもしれない。




納得いくレベルの作品に仕上がらないなら出版しない方がいい。


自分を裏切り、読者をがっかりさせるようなものなら……




氷室さんはそういう考えがあって書いても世に出さなかったような気がしている。


おそらく遺品の整理の際に遺稿が出てくるかと思われるのだけれども、未発表のそれらは氷室さんは出版を望んでいないような気がしている。


なぜなら、「自信作」ではないから。


それでも、ファンとしては読んでみたい気持ちはあるから微妙である。


書き手としても小説家氷室冴子がボツにした作品がどの程度のものであったのかも知りたい。


故人が望まないとしたならそっとしておくのがいいのだろうけど……。



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