此れは本当に私の身近で起きた事なので、多少のフェイクは入れますが本当の話です。

 

 私の生家には道路から家の入口迄、立派な御影石がズラリと並んで通路に成っていました。

家がバラックに毛が生えた程度だったので、その踏み石はとても目立ちました。

両親は毎日掃き清めて、水を撒いていました。

 

 物心ついたころに聞かされた此の御影石に纏わる話です。

御近所にいた裕福な方が詐欺に遭い、裸一貫で屋敷を追い出される仕儀になりました。

相談を受けた父は、何とかギリギリ当座の生活は確保出来るように助言したり、伝手を紹介したそうです。

 

 いよいよ明日は屋敷を出なければならなくなった晩に、其の方がリヤカーに御影石を積んでやってきて、「〇〇さん、有難うね。何とか一家心中はしなくて済んだ。庭木や石は目録に入ってないから、門から玄関までの踏み石を引っぺがして持ってきたよ。あいつ等の靴が綺麗なまんまで玄関に入れると思うなよwww。〇〇さん、この石貰ってくれ。絶対に〇〇さん家護るから。」

両親は受け取る事を躊躇ったのですが、其の方の必死な面持ちに負けて置いて行って貰う事にしました。

 

 両親は怨念の篭った石と感じていたので、丁寧に扱っていたのです。其の後、我が家は何回も改築していました。両親共に柵を断ち切れない性格だったので、縁故のある大工に頼む事が有り、其の中に手癖の悪いのが居りまして件の石をちょろまかしました。

はい、其の大工は方々で手抜きをしたのがバレて夜逃げするような事になりました。

 

 次に祟られたのは酔っ払いさんでした。何を思ったのか、道路に一番近い御影石を転がして行こうとするのです。咎められて逃げて行きましたが、暫くして蒼い顔をして謝りに来ました。

何でも逃げている途中でギックリ腰になり、やっと家に着いたけれど両手が腫れ上がってしまったのだそう。奥さんに話したら、キチンと謝っていらっしゃい!と怒られたので、自分も反省して謝りに来た。と言うのです。両親が驚いて、石の由来を話すと仰天して石を拝んで帰りました。

 

 その後、新築にしようと言う話が持ち上がり、此れが最後の建築。と、思ったのですが、又もや柵有りの建築業者が来てしまいました。最後の業者が最悪で、手抜きと資格不足が後から判りました。其の上、件の御影石を殆ど横領して売り飛ばしてしまったのです。

怖いですね、其の業者は数年後に遊びに行った先で突然倒れて、救急で運ばれた先で亡くなりました。

此の顛末は、手抜きの後始末を頼んだ良心的な業者さんから聞きました。

 

 結果、御影石は私の家から残らず消え去りました。其の後、私達の生活に支障が有ったかは良く判りません。少なくとも夜逃げとか急な重病とか変死とかは、家族の中には有りません。

 

 一度目は偶然と思いました。二度目は変だな、嫌だなと思いました。三度目は恐ろしく成りました。恨みや悲しみ、怒りの残留思念と言う物は本当に有るのだと確信しました。石の表面にベットリと我が家に石を運んだ人の思念が張り付いていたのでしょう。〇〇家から持ち出す人間に怒りの念を放射したのだと思います。我が家を守る事は出来なかったけれど、悪さをする者を罰する力は有ったのですね。

 

  残すなら「愛」の残留思念を残したいものです。