※ちょいと休憩で過去記事再掲・・
一人の男が、道に迷い、
見知らぬ海沿いの村に辿り着いた
村のはずれ
子供が一人泣いている
どうしたのか聞くと
「顔をなくした」、と・・
のっぺらぼうの子供だった
哀れに思い、墨で顔を書いてあげる
「おっちゃん、ありがとう!」
子供は喜んで、村に帰って行った
あくる日、
何人かの友達を連れてきた
みんな悲しい思いをしていると
話を聞いた男は、
子供たちを哀れに思い
一つ目小僧には、
もう一つの目を書いてやった
口裂け女の子は、
口の端を縫ってやる
「おっちゃん、ありがとう!」
子供たちは喜んで、村に帰って行った
そのあくる日
今度は幼い兄妹がやってきた
「お前たちは、何が足りないんだい?」
男は優しく聞いたが、二人は黙ったまま
傍からのっぺらぼうの子供が言う
「この二人は、心がないんだ」
怖い話をしても驚かない
笑い話でも笑わない
悲しいことがあっても泣かない
男は兄妹を哀れに思った
それから
しばし思案した後、男は言った
しばらく3人にしてくれないか
のっぺらぼうの子供は帰って行った
村はずれの小さな小屋
しばしの沈黙
波の音だけが静かに聴こえてくる
男は2人に言った
心は書くことが出来ない
だから、2人にはわしの心をあげよう
男は胸から心を抉り出し、
綺麗に半分に切り分けた
さぁ、お食べ・・
一口食べる
胸があったかくなってきた
それが、優しい気持ちだよ
もう一口
なんだか笑いたくなってきた
それが、嬉しい気持ちだよ
さらに一口
涙が止まらない
それが、悲しい気持ち
もう一口
頭に血が上って大声出したい
それは、怒りの気持ち・・
その気持ちは、我慢しなきゃいけないんだよ
最後の一口
おじさん、本当にありがとう
それは、感謝の気持ち・・
一番大切にな・・
幼い兄妹は何度もお礼を言って村に帰って行った
あくる日、
子供たちが村はずれに行ってみたが
男はもう、どこにもいなかった・・
暗い雨の夜
とおいとおい
むかしばなし