夢を見ていました
長いようで短いような
大変奇妙な夢でした
夢の中のわたしは、
うだつのあがらない老婆でした
誰にも相手にされず、気にもされず
ただ漫然と日を送るだけの
寂しい老婆でした
そんな中
わたしはブログというものに出会うのです
ブログの中のわたしは
やはり、うだつのあがらないただの老婆で
誰にも相手にされず、注目もされませんでした
「ああ、せめてここでは、周りから注目されたい」
わたしは、周囲の注目を集めるために
ちょっとずつ嘘を書くようになりました
虚構の中では、
わたしはどんな存在にだってなれるのです
虚構の中のわたしは、
どんどん人気者になっていきました
そんなある日、人気のある人の記事に出会いました
その人は、わたしとは真逆で
ブログの中でも、とてもキラキラしていました
嘘偽りなく、芯からキラキラしていました
嘘で塗り固めて、ようやくここまで来れたわたしを
その人は素のままで、あっさり超えているのです
わたしは・・
嫉妬に震えました
それは、自分でも思いもよらない
強い感情でした
自分でも、なぜそんなことをしてしまったのか
夢から醒めた今では思い出すことができません
わたしはその時、その人を貶めるために、
ついてはいけない嘘をついてしまいました
周りの人たちを利用し、
その人を悪者に仕立て上げ、自分は被害者のふりをして
ブログから抹殺しようと謀ったのです
ところが・・
そんなに事がうまく運ぶはずはありません
わたしの渾身の嘘はあっさり見破られ
逆に追い詰められることになりました
ブログの中で絶大な人気を誇っていた
このわたしが・・
このままではリアルと同じく、
ただのうだつの上がらない老婆に逆戻りです
そんなのは絶対に嫌でした
わたしは
わたしは
みんなから注目され、
ずっと、ちやほやされていたいのです
覚悟を決めたわたしは
あらゆる手段を使って逆襲を試みました
キラキラしている人と、その仲間たちに追い詰められ
心労のあまり命の危機に陥ったストーリーを作りました
その話に信ぴょう性を持たせるため
独身のわたしは、架空の旦那さんを創造しました
それだけでは数が足りないので
架空のお友達を、たくさん作り上げました
わたしはいつだって、悲劇のヒロインであり
物語の中心に居なければならないのですから
わたしの作戦は成功し、
わたしの世界を信じてくれる仲間を獲得できました
でも、どういうわけか
わたしをちやほやしてくれていた大勢の仲間が去っていったのです
わたしが作り上げた虚構の世界
その中で
わたしはこんなに虐げられているのに
わたしはこんなに可哀そうなのに
わたしはこんなに優しくて清らかなのに
わたしはこんなに若くて美しいのに
ふと気が付けば、
わたしの周りは、リアルの世界以上に
薄汚れた荒野になっていました
幾重にも嘘に嘘を積み重ねた、
表面だけキラキラの世界は
それが大きくなればなるほど、
醜い継ぎ接ぎの跡や矛盾が隠しきれなくなり
ちょっとした綻びから、脆く崩れ去っていくものなのでしょう
わたしは
自分で仕立て上げた悲劇のヒロインのまま
とうとう、自分で自分を消してしまったのです
そう・・
夢の中
独りのうだつのあがらない老婆が死にました
長いようで短いような
奇妙な夢から醒めたわたしは
一体誰なのでしょうか
ここで生きているわたしが現実なのか
それとも、夢の中のうだつのあがらない老婆が現実なのか
そもそも今のわたしは何者?
目覚めたベッドの脇
鏡の中に映る、うだつのあがらない老婆
わたしは
わたしは・・