大学を卒業した。


2年間はコロナで行けなかった分、友人関係もリセットされているのでは?とハラハラしていたが、案外話せるものである。なんなら楽しいまであった。

これから一生会わない人だっているだろう。それでもそれを口にせず、何となく暗黙の了解として「バイバイ」と言う。人生なんてそんなものなのだろう。




そんなことはどうでもよくて、今回の話はそれがメインではない。

 

 私は大学のゼミで、ドキュメンタリーを制作している。ドキュメンタリー⁈と思われるかもしれないが、名前の通りである。自分で企画を立てて編集をする。

私の同期は、後輩に託した。しかし私は自力で完成させたいと思い、2月の頭から編集を始めた。編集するには専用のソフトが必要であり、自分のパソコンでは容量が足らないので渋々学校で編集をした。ちなみに学校までは往復2時間、1400円である。


編集をしたらその度にゼミの教授に送り、どこどこがダメと指摘を受けて、修正してまた教授に送る。それに加えて映像の書き出しや、YouTubeのアップロードに時間がかかるため、とても面倒なのである。が、これは仕方ない。やらなければいけないことだから。

また、編集する場所はエアコンの効き目が悪く、死ぬほど寒い。そして誰もいないので寂しい。が、これも仕方ない。やらなければいけないことだから。


編集する場所に入室するには学生証が必要である。しかし、卒業式当日に返却しなければいけないので、実質タイムリミットはそこまでである。

私はあらかじめ教授にその旨を伝え、その日までに絶対に終わらせたいと意思表示をした。教授もそれに応じ卒業式当日まで付き合ってもらった。その点は、感謝しかない。


結局、卒業式当日に完パケ(完成すること)することができた。教授もオッケーサインを出した。これで大丈夫ですと。完成した時の達成感はなんとも言えないものだった。やり遂げたんだ、自分。本当に完成するのか?という不安があったが無事に完成したのでひと安心、これで心残すことなく卒業できたのだった!


とはいかなかった。


修正してほしいから学校に来いというのだ。

そりゃないぜ〜、完パケしたって言ってるじゃん、オマケに卒業した身なんですが。私の自由な時間は卒業してもないんですか?一度喜んだ感情を返してくれ


何より卒業式後から入社式までの1週間は入社準備をしなければいけない。卒業式までに絶対完パケさせるという約束を取ったので、まさかその後も学校に行くなんて考えてもいない。

私は意を決してもう学校には行きたくないと匂わせたメールを送った。一度完成したという言葉と卒業したという事実を武器に戦いに向かった。



しかし返答は思うようなものではなかった。

「じゃあどうするんですか?」

「こっちも忙しい」

「申し訳ないが自分の責任なので何とかしてくれ」


ため息しか出なかった。

その時私は気づいた。

ああ、この人は自分の言った言葉に責任を持たない、ずるい大人なんだと。

他人の都合なんて考えたことがなく、自分が思い通りにいくまで負担をかける人なんだと。

それをこれまで自分がやってきた仕事のせいにしてるんだと。

そうやって他人を苦しめてきたのだろうなと。



私はとても嫌気が差した。なので私は、あと1週間もない「学生」という身分を使い、ふんだんに子供のような振る舞いをした。来週からはもうしない。


まずゼミに関する写真を全て消した。LINEのグループもほとんど消した。もう少し経ったらハードディスクのデータも消すつもりだ。ちょっとぬるいかな?





リセットしたことを後悔するのだろうか、いや、そんなことを忘れるくらい忙しく働くはずだ。今は達成感なんてどうでもいい。


この記憶から一刻も早く離れたい。



私は明日編集できないか学校に頭を下げにいく。

私は来週社会人になる。