栃木SCは田中誠監督、柳下正明ヘッドコーチとの契約解除、そして新監督として小林伸二氏を迎えることを発表しました。J3では徳島に始まり、これで4チームめの監督交代となりました。しかも北関東3クラブ(水戸、群馬、栃木)がいずれも監督交代を行ったことになります。

 

 

まず、J2はビギナー監督を育てるところではないですね。限りなくリスクが低い状況、たとえば川崎の鬼木監督みたいに自分たちで指導者を育ててある程度勝手を知っているのであれば据える意味はあると思いますが、土地勘もないところで新監督として監督経験のない人間がやってみろというのは難しくなっています。その分岐点をつくったのはサンガだと勝手に思ってますが。

コーチと監督ではタスクが違いますし、強化部もまた違います。コーチは極論選手に近い距離で寄り添っていればそれなりに成立します。逆に監督は選手との距離が近いと選手の起用に私情が出てしまいますから、冷静に見る能力が必要となります。強化の人間もコーチに近いかもしれません。特に新卒担当のスカウトは選手や所属団体、その他の関係者との信頼関係によるところが大きいです。

これを考えるといかに監督のタスクが特殊で偉い役割になってしまいがちなのが分かると思います。ライセンスも他の部門だとAジェネがあれば困りませんけど、S級ライセンスが必要になりますし、みんな監督をやりたがるわけですよ。強化をやりたがる人間は予想以上に少ないというのはこうした権力構造を壊していくことも必要なのかもしれません。

 

 

こうしたビギナー監督への懸念があるなかで今季から就任したわけなんですが、どういう経緯で彼だったのかが問われるところです。田中誠という方を見るとほぼ磐田で過ごしてきました。引退後もですし。地縁があればその責任をもたせてというのは理解できなくはないんですけど、そうでない人間を招聘するというのはハイリスクだったと思います。

リスク低減として監督経験が豊富なヤンツー(柳下正明)を招聘し、監督の育成ともともと彼が得意としていた攻撃的な選手を成長させて、栃木長年の課題となっている得点力の改善を目指すといったところでしょうか。

全体を見るとうまくいったとはいえませんね。そもそも、順風満帆にいくのが奇跡だと思います。そのなかで我慢するのか、内容が悪いからあきらめるのか。結果的に後者を選択したということになります。

 

 

今回の人事ではさらに驚かされるのがヤンツーも同時にアウトとなったことです。万が一のための保険とも見られていた彼もリリースしたわけです。これで内部人事というのは難しいです。

てなわけで後任監督としては小林伸二氏を選択。そこ確保できるんかいと思わず突っ込みたくなりますが。昨季まで北九州で現場・強化にかかわってきました。J3最下位に沈んでいたチームをJ2昇格・昇格初年の躍進を支えましたが、SD兼任だったため編成参戦に後れを取り、翌年に降格、その後もチームが低迷し、昨季限りで退任しました。九州出身の方ですから、九州で仕事がしたいという意向もあって、しばらくはフリーで動くのかと思いましたが、新天地はまさかの北関東ということになりました。

年齢的にもアップデートが難しくなってはいますが、基本的に手堅いサッカーをするタイプの監督なので、残留というタスクだけを考えるなら悪くない人材だと思います。

 

 

北関東これで全滅ということになりました。監督人事がかなり大切な要素になってきているなかで、見誤ったチームもありますね。だからといってJ3→J2というのも成功事例があるかというとそうでもない(志垣さんがそれを打ち破ろうとしていますが)ので、監督の成り手はいても適性のある人間を探すのは難しいですね。安易な監督交代だけで済ますのもチームをさらに傾けるだけだということを忘れずにしたいところ。