昨年5月に柏のネルシーニョ前監督が解任になったとき、ブラジル人指揮官の受難ということをまとめようと思ってました。それから半年以上が過ぎて、Jリーグにおけるブラジル人指揮官が全滅しようとしています。

現時点で唯一のブラジル人指揮官となっているのが長崎のファビオカリーレです。そのカリーレがサントスとの契約合意に達したとのこと。長崎としては契約更新をリリース済みにもかかわらず、サントスが無理やり通そうとしています。本人、代理人、サントスと長崎側は解決に向けて話し合いを続けてきましたが、納得のいく返答を得ることができず、FIFAに申し立てることとなりました。

 

 

時系列については長崎側の言い分が100%正しいとするのであれば、何度かまとめられているので、そちらを参照するのが早いです。

少なくとも起きていることとしては正当な手続きを経ずに二重契約をしているということですね。ただ、二重契約を解除したところですでにカリーレの心としては長崎から離れているので、どうにもならない部分もあるんでしょうけど。長崎としても譲歩の条件として違約金を支払いを少なくとも求めたようですが、それを現時点では拒否。しかも、長崎とのやり取りを行うたびに一方的な監督就任のリリースや登録を行うなど、とにかくやることがめちゃくちゃです。

というのもサントスのチーム状況の悪さもこうした解決策を受け容れにくくなっている理由なのかもしれません。経営難、そして、初の2部落ちとなりました。しかも、こうした契約トラブルは2010年代後半から常態化していて、すでに2度の補強禁止処分を受けています。

落としどころとしては補強禁止処分やカリーレの資格停止などは免れないと思います。ただ、これを踏まえてチームとしての反省ができてないことが大きな問題なんですよ。

現時点でヘッドコーチとして長崎は下平隆宏氏を迎えています。昨季まで大分で指揮を執り、横浜FCで昇格経験もあります。J2を知るという点ではこの上ない指揮官の招聘に成功しました。しかし、大きな課題としては編成です。そもそも下平ヘッドとカリーレ監督ではやることが全然違うからです。監督のオーダーに応える補強もあったでしょうから、編成も出遅れました。その象徴が秋野の再契約でしょうか。こうした様々なハンディを背負ってスタートすることとなります。

 

 

さて、カリーレ個別のことは終了して、ブラジルという大きな局面で話を進めていくことにします。世界的に見てもブラジルサッカーの限界が見えてきているという事実もあります。代表チームでも監督交代が行われました。日本においても外国籍選手はブラジル人が多いものの、多国籍になってきています。選手の質としてはそこまで下がっているわけではないんですけど、指導者については国内のリーグにおいても少なくなってきていて、かなりきついですね。1対1に勝てば試合に勝てるというのがブラジルサッカーのスタンダードですが、それだけでは難しくなっているんだと思います。戦術的、アスリート能力が問われるようになっているなかで取り残されている部分はありますね。

あとはブラジルの契約文化がワールドスタンダードと大きく乖離しているのもあると思います。南米全般の問題だと思いますが。例えば保有権が分割されているケースというのは確か禁止になったとは思いますが、これも選手のやり取りをするうえで面倒なことになっているんですよね。

最後に王国としてのプライドが邪魔していて、うまくブラッシュアップできないというのがいちばん大きな理由なのかもしれません。我々が他の南米の国に関する問題を聞かないのもあるんでしょうけど。もしブラジル特有の問題だとすればこの見方が正しいことになります。

日本も他人事じゃないんですけどね。うまく全体的にスタンダードを合わせてはいますけど。チームレベルで自分たちのアップデートを拒否しているようなところもありますから。

 

 

長崎としてはなんとか最適とはいえませんが、戦える体制づくりに向かいつつあります。高田旭さんが信頼していたようですが、これがそもそもの間違いのような気もするんですけどね。ただ、逆境の長崎ほど怖いものはありません。というのも初のJ1昇格を勝ち取ったときもチームは経営危機を迎えていました。ジャパネットたかたによって事なきを得ましたが、当時の社長によるトラブルもあって大変でした。思わぬ形で新スタ元年となるわけですが、果たしてどうなっていくんでしょうか。