総括も最後となりました。最後は全体をなぞるような形で来季への展望を見据えていこうと思います。

 

 

30億クラブへの成長

今季における大きなトピックとしてはこれでしょう。チームとして初めて収入が30億を超えました。かつてのサンガの財政規模を見ても収入がおよそ25億円がマックスでしたので、それを超える規模のクラブになりました。以前であれば30億クラブが標準レベルでしたが、Jリーグの財政規模はどんどん大きくなっていて、サンガもJ1のなかでは依然として小規模クラブであることには変わりありません。ですから、今後ともクラブの規模を一気にというのは難しいでしょうが、少しずつではありますが、成長させていきたいところ。

資金だけでなく、クラブの運営面においても同じことが言えるんじゃないでしょうか。スタッフの人数、質ともに足りない部分があります。例えばなんですけど、社員が30名、強化スタッフは3人くらいで運営するというのが一般的なJクラブのイメージだったんですが、今やそれも変わってきています。現場のコーチングスタッフは以前と比べると増えていますが、現場だけでなく、フロントスタッフも徐々にではありますが、増員できるのが理想的ですね。

急激にやるというのは難しいです。うまくチーム規模を広げていけるかなんですよね。2010年代の低迷は思うように結果が出なかったわけですが、短絡的に結果を出そうとしたことも原因なんじゃないかと思う部分もあります。結果的にそれでチームが崩壊していきました。実際のところ、このチームにはどうしてもコツコツ積み上げる風潮がないというのはありますね。スカラーアスリートプロジェクトを立ち上げて補強中心の強化から、育成中心の強化にしていこうとしたわけですが、プロジェクトの根底が積み上げです。チームのJ参入に合わせて、大型補強を繰り返してきたのも積み上げを苦手にしてきた要因でしょうけど、本気で積み上げていけるかです。フロントスタッフも10年スパンで入れ替わりますから、ずっと同じペースというのは難しいんですけどね。

 

 

育成について

アカデミー中心となりますが、若い選手全般について書くことにします。

まず、アカデミーについては高校年代トップが集まり、リーグ戦を繰り広げるプレミアリーグに復帰することが2年連続でかないませんでした。今季もファイナルまでいくことができたんですが、同じくクラブユースで初めての昇格を狙う岡山の気合いに押されましたかね。プレミアに関しては近年、高体連優位になりつつあります。基本的にクラブユースは少数精鋭に対し、激しい競争を勝ち抜いた選手たちが出てくる高体連の勢いに押される傾向が出ていて、以前はクラブユースが多数だったのが、高体連と半々くらいになっています。高体連の勢いを止めていくかというのがユースを強くするにあたっては欠かせないポイントになってきそうですね。ただ、強くなればいいというわけではないんですけどね。トップチームに貢献する選手を輩出するとか、世代別代表で活躍する選手を輩出すること、もちろん、サッカーの先にある人生を豊かにするといった目的もあります。我々が見える部分は結果なので、結果でしか評価できませんけど。幸いにも今季もプリンスリーグで優勝し、ファイナルには進んでいます。チームとして一発勝負に強くなること。これはサンガ、さらには代表にいっても通ずる課題になってきます。

今季はトップチームに2人の選手が昇格。来季も2人が昇格します。平賀は最終戦デビューでしたが、インパクトを残しましたね。継続してベンチに入れた理由が分かります。植田は来季レンタル修業となりました。来季昇格する2人は最終ライン、サイズもある選手です。アカデミーで後ろを軸に育てつつ、攻撃は様々な可能性を追う。理想形なのかもしれませんね。昇格するからにはある程度戦力にならないと厳しいです。

この他、若手の活躍を見ると最年少キャプテン川崎の存在が目立ちました。代表招集もありました。しかし、シーズントータルで力を発揮しきれませんでしたね。できることを示したのは大きいですし、このようにチームを引っ張る覚悟のある選手の台頭を期待しています。外部新卒については大卒新人の福田が後半に台頭しましたし、レンタルバックの谷内田もあと少しでブレイクというところまできています。来季は尚志高校の安齋の加入が決まりました。新卒の部分も力を入れていて、J1だからこそ、サンガだからこそきてもらえるというサイクルは継続させていきたいところです。

J1にいるからこそというメリットではなくなるルヴァンですが、今季もいい機会だったなと思います。今季は二種登録、そして来季昇格が決まっている喜多くん、あと2025シーズン加入の中野くん(出戻り)がデビューを果たしました。

J1だからこそ育成できる、選手が集まるというメリットを感じました。アカデミーについてはプレミアに戻ることでサンガユースの魅力は上がることになるはずなので、来季こそはと期待しています。

 

 

3季めのJ1を戦う

2シーズン連続で残留を決めたことで来季もJ1で戦うことができます。まだまだJ1定着の道は遠いです。これだけやれば大丈夫というのは見えません。エレベーター、もしくはJ2長期滞在経験があって、サンガより先に昇格したチームであっても苦しいシーズンを送り、あわや降格というところもありましたからね。来季は20チーム編成、3チーム降格となり、降格可能性は上がります。そのなかでJ1定着を追っかけねばなりません。まずは財政規模をしっかり持つこと。金満クラブが確かに昇格失敗することもありますが、資金があればカバーする能力は上がります。それゆえ資金力は大切です。あと、育成のサイクルをしっかり回せるかです。補強も大切ですが、選手を育てていかないとこの規模のクラブだと苦しいです。夏に白井が引き抜かれました。なんとか福田がカバーしましたが、シーズン中、オフシーズン、どの時期であっても選手が抜かれる、あるいは長期離脱者が出る可能性もあります。それをモノともしない戦いができるかです。若い選手がいかに台頭していけるかですね。今季の福田の成長はいい例でした。上でも書きましたけど、クラブそのものをJ1ナイズしていくことが必要ですね。急進的にやる方法はあるかもしれませんが、できない可能性の方が高いです。失敗を経験しながら、積み上げていきましょう。来季から強化部長代理の“代理”の肩書がとれます。クラブOBの熱意に期待しています。まだまだ至らぬ部分はあるかもしれませんし、ときに厳しいことを言わなければならないこともあるかもしれません。フロントの仕事というのはけなされ、結果を出してもなかなか評価されないポジションです。批判が少ない=成果という難しいポジションではあります。他にも責任を負って大変な業務はあります。けなすことは簡単ですが、じゃあそれを重く受け止められ、組織が崩壊するような人事を招くことがいちばん駄目です。踏み外さないこと。特にクラブ組織において重要なことです。

 

 

やはり長くなりましたね。これで今季の振り返りは終了となります。最後いい形で終われてよかったです。最悪な形であればもっと厳しい内容になってましたからね。原稿(40×35字)で19ページでした。この熱意を来季も維持できるよう来季も楽しみにしています。