昔は酒が高かったらしい。

土方の日当と酒一升の値段がほぼ釣り合っていた話を聞いたことがある。

だから大酒飲みと結婚した女性は苦労が絶えなかったとか。


今は振る舞い酒を喜ぶ人間は少ないと思うが、それ故にお酒飲み放題の結婚式とか上棟式、お葬式となれば、ここぞとばかり深酒する人間もいたようだ。

酒を殺して飲むひともあまりいなくて、それは貴重な酒を飲んだのだから酔わなくては損だという意識が働いていたようにも思うのだが。


今はとんと見ないが、路上を肩を組みフラフラ歩きのヨッパライの姿というのも珍しくなかった。

それは時として父だったのだが。


戦争があり、食べ物飲み物すべてに窮した時代のあげくのこと。

食べ物の溢れる今に生きる人間が、その品の無さを指摘してはいけないことなのだろう。


盆とか暮とかの清算時に、常さんという炭焼きさんが燗酒を目を細めてうまそうに飲む姿、忘れられない。