私の幼い頃は第二次世界大戦が終決してから10年ほどでしたから、しばしば戦時中の話題が出ていました。

おおむねは食糧難の話題でした。

カボチャばかりで飽きてしまった話とか、ご飯にいろいろな混ぜものを入れた話とか、そんな話のおわりには必ず食べ物のある今が幸せだと言う結論になり、だから食べ物を粗末にしてはいけない、という教訓に続くのでした。


どんな話の流れなのか、父が突然、防空壕を掘ろうかと言い出した時がありました。

たぶんアメリカの水爆実験の報道にでも刺激されたのかも知れません。

母がバカバカしいといった顔をしているのを見て残念な思いがしたのを覚えています。

当時、あちこちに防空壕のような横穴があって子供達の好奇心の対象になっていたのです。

ですから、自前の防空壕があったら楽しいだろうと思ったわけです。

実際のところ横穴が防空壕だったのか、単に野菜の貯蔵庫だったのか、はっきりしたことは知りません。


正月、父の取引先の人達を集めての新年会が我が家でおこなわれ、酔った大人達がよく歌うのが軍歌でした。

流行歌もありましたが、軍歌は合唱するのに調子が良かったのかも知れません。

子供の私にはただ騒がしいだけでしたが。


数えてみれば今年は終戦から64年目にあたります。

それほどの年月が過ぎても、この国はまだあちこちにあの戦争の後遺症をかかえているのが現状のようです。

争いが残すものは人を幸せから遠ざけるものばかりのようです。

戦争という政治手段がいつか、この地球上からなくなることを願わずにはおれません。