我が家だけがそうだったのかどうか知らないが、誕生日というものに、あまり関心のない家だった。
両親が常に仕事で忙しかったせいもあったのだろうが、互いの誕生日にプレゼントを用意するようなことはなかった。
誕生日だからとお小遣いをもらうか、夕食のリクエストができるか、くらいのものだった。
夕食のリクエストで一番多かったのは、出前のラーメンだった。
ほとんどの家が外食する習慣などない時代でもあったけれど、子供のとって食堂のラーメンはめったに口にすることもなくて魅力的な食事であったのは確かだった。
私の大好きな刺身という選択肢もあったのだが、ラーメンばかりが多かったのにはいささか理由があった。
それは兄がラーメンを熱望したせいだった。
私の誕生日であろうが弟の誕生日であろうが
「ラーメンがいいよ!ラーメン!!」
と割り込んできて、我々もしつこく言われるとラーメンが食べたくなるのだった。
それは生まれて以来、兄に支配され続けてきたせいで、兄の意見につい添ってしまうと言う悪しき習性だった。
誠に子供時代の2才の差は大きい。
兄の誕生日が一月。
私が二月。
弟が三月。
それぞれの誕生日を一番楽しみにしていたのは兄だったのかも知れない。