カレーライスなんて言わなかった。
ライスカレーと言う食べ物だった。
学校で女の子がカレーライスなどと言うのを聞くと気取っている印象を受けたものだ。
具は今と種類的には変わらない。
豚肉、ジャガイモ、人参、玉ねぎ。
今のようにカレー用の肉なんぞはなくて、豚のこまぎれ肉が当たり前だった。
もちろんカレールーは、まだ市販されていなかった。
リンゴとハチミツのバーモントカレーが売り出されたのは、ずっと後のこと。
玉ねぎのみじん切りをしつこく炒めてから始まるやり方もずっと後のこと。
今はルーが進歩したので、あのやり方は古く感じる。
カレーは時代と共に進化する料理かも知れない。
具材を炒めてから水を入れ、それが煮えた頃、小麦粉とSBのカレー粉をプライパンで煎ったものに鍋の煮汁を入れて溶き、鍋に戻す。
そんな母の手順を見ているのが好きだった。
誰が始めたのか知らないが、ライスカレーにトンカツソースをかけて食べるのが、その頃の我が家のはやりだった。
いま思うと貧弱なカレーだが、夕方遊び疲れて家に帰った時、カレーのにおいがすると嬉しかった。