好きな本のこと。

本は好きな子供だった。と言うか「文字」が好き。
漫画やゲームは謎のポリシーで一切買ってくれなかった母でしたが、本はよく買ってもらえた。
 「昔話全集」「学習と科学」から「偉人伝」「ことわざ辞典」まで。(でも新聞を読もうとすると「子供のくせに生意気だ」と怒る母。つくづく自分ルールが絶対の人だ)

 そんな中、はじめて出会った大人の本だったのが、よしもとばななさんの「キッチン」。

 ……衝撃でしたよ。
  天涯孤独になった大学生が初対面の親子(同世代の男の子と元お父さんだった母親)と暮らす物語なんて「日本昔話」になかったもん。
そして大事件が起こることもなく淡々と進み、ハッピーエンドなんだかよくわからない終わり方。

 そして何よりも独特の文体。必要以上の説明が一切ない文章の短さ。擬音や言いっぱなしの主観だらけ表現。
 読み手に「行間を想像しろ」って言ってるような作品だ。発売当時、文学界のお偉いさんさんがこぞって批判してたのもわかる。

 ただ、はじめて読んだ中学生だった私はただ「なんだかわからないけど、今まで読んでた小説とは違うやん」とびっくりしたことだけは覚えている。
  どれくらいびっくりしたかと言うと、小説の全文章をどこからか拾ってきたワープロ(タブレットでもなくパソコンですらない時代ね☺️)にひたすら打ち込むと作業に熱中したくらい。
 それ以来、ばなな作品を読み続け大学では現代文学を専攻して卒論まで書いた。あんなお粗末な論文で卒業させてくれた教授ありがとう。

 ばなな作品には、優等生キャラは出てこない。
世間のルートから外れていたり、ぐうたらだったり、少しズルかったり。
 でも、 自分の人生を誰かのせいにはしない。自分の足で立ち、何処に次の一歩を踏み出すかは自分で決める。
 自分の人生を生きることの難しさを実感する今、改めて読み直してみるとあの頃には気付かなかった言葉が響くこともよくある。
 だから本は捨てられない。
そして私の本棚は昔も今も片付かない。