@Sweet moon 7 | 青くんの部屋

青くんの部屋

ここはサトシック、アラシックのお部屋です。
【★取り扱い説明書】をご確認の上、入室ください。

 

 

 

 

 

 


暗に、誰がそんな事を言ったのかと問われていた。
それに侍従が答える。


<御殿でお見掛けしないと、もっぱらの噂でございます。>
「きっと何か、お役目だと考えました。」
『そうかい。 ほんに、そなたは聡明な御子だなぁ…。』
「時に父上、一つお伺いしたい事がございます。」
『なんだい?』
「その、牽牛星のご内儀を奥へ入台させたいとお考えだったというのは本当でございますか?」
『また、誰がそなたにそのような事をそなたに申したのだ。』


そう言いながらもお上は笑っていた。


『本当だよ、とても可愛らしい方だったから、是非側に置きたいと思ったのだが…。』
「何故なさらなかったのですか?」
『年上に仕えるのは面倒だから嫌だって言われたんだよ。』
「…振られたのですか?」


何て無礼なっ。


『はははは…いいんだよ。
あの者の素晴らしい踊りを愛でたいと思っていただけだから…。』


そうおっしゃりながら、父上は寂しげな表情を見せていた。
やっぱり傷ついていらっしゃるんだ。
なんて奴。
やっぱり、嫌いだ。





◆◆◆





お目見えが続き暫し休憩を取らせた。
今日は随分んと人が多い事に驚かせられていたが、大山の事を持ち出す者がいない事で少しホッとする。
今、それが公になったら民が混乱するだろう。
牽牛星の報告だと、確かに何者かが大山の頂上に不時着した形跡はあるものの既に宇宙船らしきものは姿を消していたそうだ。
大山は大きな山だ。
探索にも時間がかかる。


『お上はそんなに織女星殿がお気に入りでございましたか…。』


侍従が突然彼の内儀の話を持ち出した。


「なんの話だい?」
『先ほど、東宮の前で寂しそうにされていらっしゃいましたよ。』
「そうか‥?
まあ、確かに気がかりだ。 牽牛星からいい知らせが届かないんだよ。」


侍従は合点がいっていないようだった。


「大山が戦火にまみれる事は避けたいからね…。」
『大山の事が気がかりでしたかえ…?』
「それはそうだよ。
あそこはなんと言っても大切な場所だ。」
『失礼いたしました。 私はてっきり…。』
「てっきり何だい?」


侍従は急に恥ずかしそうに黙り込んだ。


『いえ…その…。』
「何だ? 言いなさい。」
『織女星殿を正妻にお迎えしたかったのかと…。』
「何だって…?
はっ、ははははは…これはおかしい。
勘違いだよ。
一番の勘違い者は織女星だがね。」
『え…? 何の事でしょう?』
「側に置きたかったのは講師としてだよ。
踊りが素晴らしいから、舞踊の先生に迎えたかったんだ。」
『はあ…。』


あんなに細くて可憐な様子なのに本当は力強い。
生に満ち溢れていた様子に心を惹かれた。


「東宮にいいと思わなかったか…?」
『ええっ…。』
「東宮も踊りが好きだろ?
ちょっと不器用だが素質はある。
指導を通じで、芽生えるって事だってあるだろ?」
『は?』
「あの頃はベガの王子の事情を知らなかったからなぁ…
皇子の妃に迎えたかったんだ。
あの子には年上くらいがちょうどいいと思ってねぇ。」
『そうでございましたか…
お上の深いお心も知らず、失礼な事を申し上げました。』
「まあ、もういいよ。
むかしの話だ。
今となってはもうその考えはないよ。
あの二人が…とってもお似合いだからね。」
『はい。』


可哀想に…
やっと静かに暮らしていたのに、また離れさせてしまった。
恨んでいるだろうなぁ…
あの子に恨まれると、心が痛むよ。

可愛いから…