希記の迷々思考実験室 -14ページ目

希記の迷々思考実験室

自分の問いへの答えを求めて想像を広げよう。

 男子高校生Aは日本史の担当教師を信用できない。その教師は教科書の内容を覚えていないときがある。間違えたり、意味が分からない言葉を使ったり、うやむやにしたり、思い付きを語ったりする。それだけではない。女子生徒に体を触るセクハラをしたり、居眠りする男子生徒を殴ったりする。

 

 その状況を見た男子高校生Aは日本史教師を信じられないために、日本史の教科書も信じられなくなった。教科書の内容を覚えられないから成績が下がってしまった。

 

 その男子高校生Aはこれでは駄目だと思った。日本史の教科書を本当に信じるためには何をすればよいか考えた。その教科書に掲載されている史料を調べればよいはずだ。また、教科書の内容が記された先行研究論文を調べればよいはずだ。膨大な論文や史料を見る必要があるだろう。そのために、古文や漢文だけではなく英語も勉強する必要があった。現状の能力では不可能だと絶望した。

 

 絶望した男子高校生Aは、そのことを仲のよい国語の担当教師に相談した。

 

 その国語教師は相談に答えた。今使っている教科書は、国の教科書検定に合格した教科書だ。だから、その教科書の内容を高校生が疑う必要はない。日本史教師が信じられないなら、教科書を信じて勉強を疎かにしてはいけないと国語教師は男子高校生Aを説得した。国語教師の言葉を信じて、男子高校生Aは教科書を信じてみようと思った。

 

 私たちは教科書検定に合格したから正しい教科書だと受け入れるべきだろうか。

注意:作り話より。

 

◆解説

 専門家ではない人は、教科書の内容が正しいと信じるしかない。

 

 教科書が正しいと信じられる理由は3つ考えられる。第一の理由は、その教科書を使って指導する教師を信じているからだ。第二の理由は、教科書が教科書検定に受かったという事実があるからだ。第三の理由は、教科書の内容が教科書を作った人の研究によって確信できる内容になった事実からだ。

 

 すると、高校生は教科書を使って指導する教師や教科書検定を信用すればよい。信用できれば、教科書の内容が正しいと受け入れられる。受け入れたら、疑うことなく内容を受け入れられる。高校生ならば、それで満足すればよい。大人でさえも教科書の内容がすべて正しいと判断するのは難しい。その理由は、専門家でなければ教科書の内容がすべて正しいと証明するのは難しいからだ。教科書を正しいと判断するのは専門家の仕事だ。

 

 もし、信用できなくて日本史の教科書への理解を試みたら、困難に陥る。理解のために教科書に採用された史料や先行研究を確認して採用した理由を知る必要がある。それに加えて、採用されなかった史料や先行研究を確認して、採用されなった理由も知る必要がある。そのために、様々な史料や先行研究の論文を調べる。古文や漢文で登場する普段使わない言葉を習得する。一つ一つの先行論文を調べるだけで多くの時間がかかる。

 

 したがって、高校生に教科書が正しいかどうかを判断させる必要はない。その教科書の内容を覚える姿勢を強要すればよい。教科書の内容を覚えて試験に答えられなければ、単位をもらえないために留年して退学に追い込まれる。その脅迫は教科書が正しいかどうかを求める必要がないと高校生を窮地に追い込むだろう。

 

 あなたは教科書の内容がすべて正しいと判断できるだろうか。

希記より。